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2007年 05月 25日 チカラワザAE M42一眼レフ Vivitar XC-3




米国コロラド州からebay経由でやってきた、Vivitar XC-3というM42マウント一眼レフです。
非常にコンパクトなカメラで、"OLYMPUS OM-1"とほぼ同じ大きさ。
弁当箱のように重厚長大なカメラが多いM42マウント一眼レフの中では出色の小ささです。
手持ちのM42レンズの中では大振りな、Auto Yashinon DS-M 50mm F1.4を付けてみたところ、Zuiko 50mm F1.2付OM-1のような雰囲気になってしまいました。
うちにあるM42一眼レフの中では、"CHINON CS-4""Revueflex SD1""FUJICA ST605II""Voigtländer Bessaflex TM Silver"に並ぶコンパクトさです。
他のM42マウント一眼レフとのサイズ比較は下記のようになります。

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 Mamiya MSX 500
  151×96×53mm、700g
 Yashica FFT
  145×94×50mm、660g
 Asahi Pentax SPII
  143×92×50mm、625g
 VEB Pentacon Praktica MTL5
  142×97×52、580g
 FUJICA ST605II
  133×86×49mm、565g
 Bessaflex TM Silver
  135.5×89×52.5mm、520g
 CHINON CS-4
 Revueflex SD1
  135×86×50.5mm、455g
 Vivitar XC-3
  136.5×83.2×51mm、530g
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Vivitar XC-3、横幅、奥行きが特に小さいわけではありませんが、ペンタ部の高さ、トップカバー肩の高さは群を抜いて低く、これがコンパクトに見える要因となっています。
見た感じは、OLYMPUS OM-1、Pentax MEに非常に似た印象で、とてもM42マウントのカメラに見えません。

Vivitarというブランド、聞いたことがある人もいるかもしれません。
アメリカでは広く知られるカメラやレンズの販売元です。
"Vivitar"は、アメリカ・カリフォルニア州に本拠を置く総合写真機材ディーラーで、1938年、2人のドイツ系移民によって設立されました。
その特徴は、ほとんどの商品をOEM調達するファブレス経営にあります。
ビビターは自社生産をせず、OEM調達した商品に自社ブランドを付けて販売するというビジネスを長い間続けてきました。
商品セグメントは圧倒的に入門機~中級機で、高級機や専門性の高い機材は扱っていません。
Vivitar XC-3も典型的なローコストカメラです。

このカメラも当然ながらOEMです。
製造したのは、長野県のコシナ。
"Voigtlnder Bessaflex TM"の御先祖様にあたります。
ボトムカバーには、"MFG by COSINA JAPAN"の銘が刻まれています。Vivitar XC-3は、COSINA CSMという名前でも販売されました。

このカメラが発売されたのは1978年。
当時、コシナというカメラメーカーを知っている人は、業界関係者を除いて、ほとんどいなかったのではないかと思います。
コシナが一般に知られるようになったのは、1999年のBessa L発売以降のことです。
それまでのコシナは、こうしたあまり知られることがないカメラを営々と作り続け、黒子に徹してきたわけです。
販売力がないメーカー、販売力しかない商社、両者は持ちつ持たれつでうまく回っていたようです。


 Vivitar XC-3 仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  マウント: M42 (プラクチカスクリューマウント)
  シャッター: 電子制御横走り布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, M(メカニカル1/50sec.), 4sec.-1/1000sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、スプリットマイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: 1.0× (at 50mm)
  ファインダー視野率: 93%
  露出計: CdSセル TTL中央重点絞込測光、3LED表示
  測光レンジ: EV+0.5 - EV+18 at ISO100
  シンクロ速度: 1/60sec.
  バッテリー: 1.5Vボタン電池×2 (LR44、AG13、SR44, S76 etc.)
  外形寸法: 136.5×83.2×51 (mm)
  重量: 530g
  発売年次: 1978年
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非常にプレーンなM42スクリューマウントです。
独自拡張された開放測光のためのギミックなどはまったくなく、ただのネジ込みマウントになっています。
おそらく、1978年頃は、M42マウントを拡張して使いやすくしようという時代はとっくに終わり、過去の遺産として、むしろ互換性を重視しようという時代となっていたのではないかと思います。
現代において、様々なM42マウントレンズを使う際には、こうした特定の色のない、プレーンなマウントを持つカメラの方が互換性の上でトラブルが少なく使いやすいと思います。

マウント下部、向かって左側に見える銀色のボタンは、いかにも絞り込みボタンに見えますが、実際には逆で、これは絞り込み解除ボタンです。
このカメラ、絞り込み測光のカメラなんですが、特に絞り込みボタン/レバーといったものは見あたりません。
実は、シャッターレリーズボタンを半押しすると、カチャッという音と共に、絞り込まれる仕組みとなっています。
この状態で、露出を合わせ、次のストロークで実際にレリーズを落とすようになっています。
フォーカス合わせ~の、カチャッ、露出合わせーの、カション!というリズムで撮影するカメラですね。

半押しからレリーズを切るまでの間に気が変わって、再度フォーカスを合わせたい、待機状態に戻したい、という場合に、マウント下部左側のボタンを押すと、絞り込まれた状態が解除されます。
こうした瞬間絞込系のレリーズは使いにくいものが多いのですが、このカメラの場合、非常に正確に動作するため、特にイライラすることもなく軽快に使うことができます。
それでも、レリーズを切る際、必ず絞り込まれるシークェンスがあるため、撮影リズムがおかしくなる、という人がいるかもしれません。






しゃらくさいことに、トップカバーは真鍮製です。
上の写真ではよく分かりませんが、ペンタ部の塗装がはげて、地金が見えている部分があります。
トップカバー、ボトムカバーがプラスチック製であれば、総重量は500gを切ったのではないかと思われます。

シャッターはローコストメータードマニュアルモデルにしては珍しく電子制御です。
電子制御シャッターらしく、4秒から1/1000秒まで設定できます。
BとMのみはメカニカルシャッターで、Mに設定すると1/50sec.のシャッターが切れます。
バッテリーがなくなっても、最悪、Bと1/50sec.は切れる設計です。
どうせなら、Mを1/125sec.ぐらいにしてくれたら、と思います。

軍艦部は、ごく普通のレイアウトに見えますが、一ヶ所だけ普通じゃないものがあります。
それは、巻き上げレバーとシャッターダイヤルの間にある銀色のポッチ。
これは、リバースクラッチ解除ボタンです。
フィルム巻き戻し時に、このボタンを押してから、クランクを回します。
普通はボトムカバーにあるものですが、何故かトップカバーに設置されています。

ファインダーは、すこぶるクリアで非常に見やすいです。
等倍ファインダーというのはやはりいいものです。
APS-Cの井戸の底を覗くようなファインダーを見た後、このカメラのファインダーを覗くと、まったく別世界の快適さです。
ローコストカメラといえど、こうした基本的な部分の手抜きがないのは、まだまだ良い時代だったのだな~、と思います。






シャッターは、横走り布幕フォーカルプレーンです。
電子制御シャッターにして横走り布幕というのは何だかチグハグな印象です。
この時代、電子制御シャッターはほとんど縦走りメタルフォーカルプレーンになっていましたから。
とはいえ、電子制御横走り布幕フォーカルプレーンシャッターのカメラは、"Canon A-1""OLYMPUS OM-2N"など、いくつもあり、特に珍しかったわけでもありません。

このカメラ、おそらくはワンオーナーものです。
非常に丁寧に扱われたようで、ほとんど無傷の上、取扱説明書まで付いてきました。
しかし、1978年製だけに、モルトはボロボロでした。
ミラー受けモルトは、ミラーが当たるたびに崩れてくるありさまで、さすがに実用に耐えないので、すぐに新しいものに交換しました。
フィルム室のモルトも同様で、加水分解真っ最中、じとじとのネバネバです。
こちらも、近々張り替えてやる予定です。






このNikonフォトミックファインダーのようなものは専用外付AEユニットです。
Vivitar XC-2、XC-3、Cosina CSR、CSM、CSLなどで使えます。
このAEユニットを接続すると、Vivitar XC-3が絞り優先AEカメラになります。
念のために書いておきますが、Vivitar XC-3は、メータードマニュアルなカメラで、AE機構は付いていません。

絞り優先AEカメラになる、といってもその方法は非常に原始的というか強引です。
測光時にレリーズボタンを半押しすると、サーボモーターの力でシャッターダイヤルがガッチャガッチャ回るだけ。
モロ直球というか、チカラワザの世界です。
エレガントとかソフィスティケイティッドの対極にある、実に楽しいメカニズムです。

AEユニットは、取り外すと、こんな形をしています。
カメラへの固定は、アクセサリーシューへのネジ止めです。

カメラとの通信は、シンクロコネクター上部の専用端子にケーブルを挿して行います。
データ通信とはいっても、デジタルデータのやりとりではなく、アナログデータオンリーによるものと思われます。
1978年当時、デジタル制御によるAEというのはなかったのではないでしょうか。

処理された信号は、左端のシャッタースピードが記されたドラムをサーボモーターによって必要な量だけ回転させます。
このドラムは、シャッターダイヤルと物理的に噛み合うようになっており、結果として、シャッタースピードが変わります。
回転角検出センサが付いているかどうかは不明です。
オールアナログ処理でしょうから、エラー訂正機能などはなく、メカトロニクスとしては、かなり大雑把なもののような気がします。

電源は、4G13×1本。
現在のものでいうと、4LR44 or 4SR44。
1.5Vボタン電池、LR44を直列に4発つないだものです。
4LR44で6v、120mAh。
いずれにせよ、たいした容量ではないです。
あっという間に消耗してしまいそうです。



シャッターダイヤルとの接続部はこんな感じです。
このAEユニットを取り付けると、マニュアル露出が非常にやりにくくなります。
このカメラ、AEユニットを取り付けたが最後、マニュアル露出をすることは想定されていないようです。





AEユニットにバッテリーを入れ、動かしてみました。
レリーズボタンを半押しすると、ブィ~ンと怪音を発しながら、そろりそろりとシャッターダイヤルが動きます。
動作速度は亀のごときトロさです。
急いでいるときには、取り外してしまいたい衝動に駆られるでしょう。
所定のシャッタースピードに達するとモーターは停まりますが、停まらないときもしばしばあります。
いつまで経っても、ブィ~ンブィ~ンとモーターが唸り続けていることがよくあります。

経年劣化なのか、もともとアバウトなものなのか不明ですが、まったく信頼感はありません。
ダイヤルが停まったとき、これで本当に合ってるのか?といちいち確認したくなります。
つまり、まったくAEの役目を果たしていないということです。^^
これなら、体感優先AEの方がよっぽど速くて確実です。

コシナの技術陣には申し訳ないのですが、はっきり言って実用品のレベルではないです。
この時代、"Asahi Pentax ME""Minolta XD"などの実用的なAEカメラはいくらでもありました。
AEが使いたいのであれば、そうした一眼レフを使えばいいのであって、こうしたチカラワザテクノロジーによるAEユニットを使う意味はまったく見いだせません。
伊達と酔狂が優先する、というのであれば止めはしませんが。

Vivitar XC-3というカメラ、AEユニット抜きにして考えた方が幸せになれると思います。
M42マウント一眼レフとしては異例にコンパクトですし、動作も軽快で安定していますから。


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追記
M42マウント一眼レフ&レンズのウェブサイトを作りました。
作ったといっても、今まで書いてきたPhotologのエントリにリンクを張っただけのものですが。

 "Xylocopal's M42 Thread Mount Cameras & Lenses"
  http://www.xylocopal.com/m42/
by xylocopal2 | 2007-05-25 16:19 | Hardware
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