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2008年 05月 10日 最終進化型バルナックライカ KMZ Zorki-4 前編


旧東欧"COMECON"諸国のカメラを家来に従え、大きな顔をしている総大将のKMZ Zorki-4の図です。
今回のお題は、このKMZ Zorki-4。
ソ連製135判レンジファインダーカメラです。

 Zorki-4 仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  マウント: M39 (Lマウント/ライカスクリューマウント)
  シャッター: 横走布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, 1-1/1000sec.
  ファインダー: 1眼式2重像合致式距離計連動、視度調整機能付
  露出計: なし
  シンクロ速度: 1/30sec. (タイムラグ調整機構あり)
  フィルム装填: 裏蓋底蓋一体着脱式
  フィルムカウンター: 手動復帰順算式
  外形寸法: 142×92×39mm
  重量: 595g
  製造年: 1956年~1973年
  製造国: ソビエト社会主義共和国連邦
  製造所: KMZ (クラスノゴルスク機械工場)
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今さらいうまでもなく、ゾルキシリーズはバルナックライカのコピーです。
もちろん、ドイツのエルンストライツ社から正式なライセンスを得て製造したものではなく、ソ連が勝手に作ったパチモンです。
いわば違法コピー。
今でいうリバースエンジニアリングのような手法で、完成品ライカを分解し、研究を重ね、バルナックライカもどきを作ったのだろう、と思います。
バルナックライカというのは構造がシンプルなため、精度を問わなければ、コピーを作ることはそれほど難しくなかったようです。

オリジナルバルナックライカは、シルキータッチの流れるような滑らかな操作感が特徴でした。
基本設計が良く、工作精度が素晴らしかったのですね。
それに対し、ゾルキはゴリゴリした荒い操作感のものが多く、あくまでも「写真がきちんと写っていればOK、シルキータッチって何ですか?」という実用本位のカメラでした。
個体差も大きく、まずまず問題なく使えるものから、フィルムを巻上げ時に怪力を要し、力を入れすぎてパーフォレーションを破ってしまうものまであったといいます。

同じライカコピーでも、"Premier Instruments Kardon"あたりはオリジナルより質が良かったといいます。
Kardonというのは、第二次世界大戦中にアメリカ本土で作られた米国製バルナックライカです。
開戦と同時に、交戦国のドイツからライカを取り寄せるわけにはいかなくなり、窮余の策としてアメリカ製ライカを作ったわけです。
発注元は米軍通信部隊。
情報収集活動、ひらたくいうとスパイ活動のためにどうしてもライカを必要としたのでしょう。
というわけで、米軍がニューヨークライツ社経由でプレミアインスツルメンタル社に作らせたライカコピーがカードンというわけです。

カードンは良いカメラですよ。
特に値段が。
ebayあたりでも、Kodak Ektar 47mm/F2の付いたものは軽く$3000はします。
製造台数が極めて少なく、軍用/民生用合わせても2000台ぐらいしか作られなかったので、こういう価格になるようです。
私はカードン本体はともかく、Ektar 47mm/F2が欲しくて欲しくて‥‥、
LマウントのEktar 47mm/F2が駄目なら、せめてレチナIIのEktar 47mm/F2付をと、ebayを虎視眈々‥‥、

あ、何を書いているのだ?^^
話をゾルキに戻します。
ゾルキに関しては、与太話、法螺話を中心に書こうと思っていたのですが、その手の話はすでに私の師匠が書いちゃってるんですね。
それも半端な量でなく。
師匠ってのは、怪著"ソビエトカメラ党宣言"の著者、"中村陸雄氏"のことです。
2番煎じ、3番煎じになるのも癪だし、師匠より面白いテキストを書く自信もないので、普通のカメラ紹介を書きます。
期待した人、すみません。
そのかわり、師匠が記した脱力系ゾルキコンテンツへのリンクを貼っておきます。
このテキストの100倍以上は面白いことを保証します。^^

ゾルキシリーズを女性に勧めるの巻
 "Fantastic Camera Gallery / Zorki-1"
  http://fantastic-camera.com/zorki1_01.htm

ゾルキ4の前ユーザ妄想記 「お父さんはコンパクトカメラなど使ってはならない!」
 "Fantastic Camera Gallery / Zorki-4"
  http://fantastic-camera.com/zorki4_001.htm

ゾルキの故郷訪問記 「クラスノゴルスクに倉科権之助機械工場を訪ねる」
 "Fantastic Camera Gallery / Horizon"
  http://fantastic-camera.com/horizon_001.htm

師匠は役に立つコンテンツも書いています。
下のものは、レンジファインダーカメラやソ連製カメラを使ったことがない方でも、Zorki-4が使えるようになるという素晴らしいコンテンツです。
露出計を持っていない人のために、体感露出入門も合わせて掲載しました。

Zorki-4の使い方
 "Fantastic Camera Gallery / zorki-4の使用法 01"
  http://fantastic-camera.com/zorki-4_inst_01.htm

とても適当なスナップショット講座 <露出編> ~露出計を捨てて街に出よう~
 "とても適当なスナップショット講座<露出編>"
  http://fantastic-camera.com/snap_01.htm




5月4日に入手した、KMZ Zorki-4 with Jupiter-8 50mm F2です。
オークションでレンズ込み1万円ちょうどなり。
ボディ/レンズとも、シリアルナンバーは6300万台ですから、1963年の製造です。
ソ連のこの時代のカメラ/レンズはシリアルナンバーの上二桁が製造年を表しています。
Zorki-4の製造開始が、1956年ですから、7年目の製品ですね。
ちなみに、1956年というのは私が生まれた年です。
♪貴様と俺とは同期の桜~。
すみません、脱線しました。

Zorki-4は1956年から1973年の17年間に渡って製造されました。
フィルム巻上げをノブ式からレバー式に変更しただけのマイナーチェンジモデル、Zorki-4Kは1980年まで製造されていましたから、実に24年にわたるロングセラーカメラです。
製造台数は、Zorki-4が170万台あまり、Zorki-4Kが50万台あまりです。
合計すると、ソ連製カメラの中でもベスト3に入る生産数になります。

 生産数の多いソ連製カメラ
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  SMENA-8/8M: 2100万台 (1963-1995)
  ZENIT-E: 330万台 (1965-1982)
  LUBITEL2: 220万台 (1955-1980)
  FED-2: 200万台 (1955-70)
  FED-3: 200万台 (1961-80)
  ZENIT-122: 190万台 (1989-)
  Zorki-4: 170万台 (1956-1973)
  ZENIT-TTL: 160万台 (1977-1985)
  ZENIT-11: 150万台 (1981-1990)
  ZENIT-12XP: 150万台 (1983-2000)
  LOMO LC-A: 120万台 (1983-2000)
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ダントツで多いのがスメハチ、"SMENA-8/8M"なんですね。
一桁も違うとは思いませんでした。
"ZENIT-E"は輸出用が多かったのだろうと思います。
日本でも、スーパーダイエーで"メプロゼニット"という名前で売られていたほどです。
"LUBITEL2"というのは、F16ぐらいまで絞り込まないと満足に写らないと言われるほどのチープな二眼レフですが、けっこう売れていたんですね。びっくりです。
とまれ、Zorki-4は高級機にもかかわらず、古い年代のカメラとしては非常によく売れています。
LOMO LC-Aより売れたというのには驚かされます。

これだけ長期間、大量に作られたわけですから、Zorki-4には様々なバリエーションがあります。
軍艦部のロゴがキリル文字のもの、ラテン文字のもの、ロゴ/シャッタースピードダイヤルの文字がエングレーブ(彫り込み)のもの、シールプリントのもの、Made in USSRの文字があるもの、ないもの‥‥。
真面目に分類し始めると日が暮れます。

私の手元にやってきた個体は、"後期型A-2-b"という分類になるようです。シャッターダイヤルがエングレーブで、ロゴはキリル文字のシールプリントです。

 参考ウェブサイト
  "World Leica Copies - U.S.S.R - Zorki"
   http://www.leicacopies.com/USSR/Zorki.htm

シールプリントというのは、時間が経つと薄れてきて読みにくくなるため、シャッターダイヤルだけはエングレーブの方がいいです。シャッタースピードが読めない場合は、だいたいこのあたりだろう、というギャンブルに近いシャッター速度設定になります。

私のZorki-4はキリル文字ロゴの上、Made in USSRの文字がありませんから、輸出用ではなくソ連国内向けの製品と思われます。
ソ連国内で使われたものは比較的綺麗なものが多いです。Zorki-4はソ連国内用カメラとしてはハイアマ御用達の高級品でしたから、大切に使われたものが多いのでしょうね。

一方、西側資本主義陣営に輸出されたものは、程度が悪いものが多いです。
ソ連で作られた安物パチモンカメラ、という意識で使われたでしょうから、粗雑に扱われたものが多いような気がします。
落とすわ、ぶつけるわ、放り投げるわ、人をなぐるための凶器にするわ、まぁ、ろくな扱いを受けていなかっただろうことは想像できます。^^

私のゾルキ4は1963年製ですから、工場としては作り慣れて緊張が緩み始めた頃の製品と思われます。
そのわりには、どこも具合が悪いところがありません。
フィルム巻上げも滑らかとはいわないまでも、特に渋くもありません。
給装テストのため、フィルムを2~3本巻き上げてみましたが、指の腹が痛くて困る、ということにはなりませんでした。

シャッター幕もいたって綺麗です。
シワもなければカビもなく、もちろんピンホールもありません。
"Xylocopal's Photolog 2008/05/08 ゾナーの末裔 KMZ Jupiter-8 50mm F2.0"に書いたように、1960年代前半のソ連は栄光の社会主義共和国連邦の時代ですから、労働者の士気も極めて高く、製品も優秀だったといえそうです。
ソ連製カメラにおけるヴィンテージとは、1960年代初頭ということになりそうです。

なお、上の写真でロゴの左側に見えるのはシンクロターミナルです。
ドイツ式と呼ばれる一般的なもので、手持ちの外光式オートストロボ、"National PE-320S"が問題なく使えました。
シンクロスピード設定に関しては後ほど、シャッターダイヤルの項で詳述します。




1眼式2重像合致式距離計連動ファインダーです。
右側の大きな窓がフレーミング用、左側の小さな窓が測距用窓です。
一眼レフでもないのに、1眼式とはこれいかに。

バルナックライカのこの部分をよく見ると、穴が3つ開いていることが分かると思います。
丸い2つの穴は測距用、四角い穴がフレーミング用です。
バルナックライカというのは、測距用ファインダーとフレーミング用ファインダーが同居した構造になっているんです。

 参考写真: "バルナックライカのファインダー"

背面のファインダー穴もバルナックライカでは測距用とフレーミング用の2つがあり、まず距離を合わせてから、視点を隣の穴に移動させフレーミングを行うことになります。
こうしたファインダーを2眼式2重像合致式距離計連動ファインダーと呼びます。
1950年代には結構多かった方式です。
それに対し、1眼式レンジファインダーでは、背面の覗き穴は1つだけです。
ここを覗くと、視野中央に二重像合致式の測距窓が見えるようになっています。
往年のコンパクトカメラに多かった方式ですから、あれか!と思われる方もいるはずです。

2眼式も視点移動に慣れれば、それほど面倒ではありませんし、むしろ精度的には良いぐらいなのですが、世の中の趨勢は1眼式に向かっていました。
2眼式はもっさり古くさく、1眼式はモダンで格好よく見えたのでしょう。
カメラマニアなんて、そんなもんです。^^
エルンスト・ライツ社でもバルナックライカの後継機では2眼式を捨てました。
1954年、すばらしい出来の1眼式2重像合致式距離計連動ファインダーを引っ提げて華々しく登場したのが、後にレンジファインダーカメラの代名詞的存在となった、"LEICA M3"でした。

Zorki-4のファインダーもLeica M3同様、1眼式2重像合致式距離計連動ファインダーですが、その見え方はかなりショボいです。
Leica M3の場合、採光式ブライトフレームというものが、装着したレンズの画角に合わせて視野に現れます。
フレーム内に収まるのはここまでだよ、というのが一発で分かるようになっています。
ブライトフレームがあるおかげで、レンジファインダーカメラでも、一眼レフなみにクリティカルなフレーミングが可能になったのです。

一方、Zorki-4にはそうしたブライトフレームがありません。
視野が広く見やすいのですが、フレーム境界が曖昧で、どこからどこまでがフレーム内なのか、慣れないうちはさっぱり分かりません。
そのため、最初のうちは頭が切れた写真、身体が半分切れた写真などといった、妙なフレーミングの写真を量産します。

こうしたカメラで、隅の方に主要被写体を置いたフレーミングをする場合、少しずつ位置をずらした構図のものを2~3枚ブラケット撮影しておいた方が安全です。
Zorki-4で一番安全なのは日の丸構図です。
ファインダーに慣れないうちは、間違っても"カマトンカチ構図"にしてはいけません。^^


上の写真の右端、フィルム巻き戻しノブの下に、視度補正レバーが付いています。
これはかなり強力で、私のように近視+メガネ+老眼の者でも実にシャープな像を結ばせることができます。
ただ、私の個体だけの問題かもしれませんが、レバーが簡単に動いてしまうので、撮影時にいちいち視度補正レバーを調整しなおす、という作業が避けられません。
あまりにも面倒なので、最近はビニールテープで固定して使っています。


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Xylocopal's Photolog : 最終進化型バルナックライカ KMZ Zorki-4 後編に続く
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by xylocopal2 | 2008-05-10 22:04 | Hardware
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