2009/04/26 追記 ================ "Xylocopal's Photolog 2009/04/26 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 2009"をUPしました。 上記改訂版2009の方が、より簡単に好結果を得ることができると思います。 以下は旧コンテンツです。 2005年10月29日に記した"ネガフィルムスキャン入門"ですが、3年近く経った現在、スキャナドライバのバージョンアップなどにより少々内容が古くなってしまいました。 改訂しないとまずいなあ、と思いながら放置を続けてきましたが、予想外に需要が多いようなので、改訂版を書きました。 本来は全面改訂版を書くべきなのですが、今回は変更点だけの改訂にとどめています。 何しろヘタレの根性なしですから、全面改定はあまりにもしんどいです。 どうか御容赦ください。^^ 基本的な考え方/方法は前回と同じです。 ラチチュードの広いネガフィルムの良さを活かすため、できるだけ白飛び黒潰れの少ない多階調のスキャン画像の作成を目指しています。 ポジフィルムのことは考慮していませんから文句を付けないように。 また、価格の安いフラットベッドスキャナを前提に解説しています。 フィルム専用スキャナの作法は違うぞ、というようなクレームを付けないように。 まずは、以前のテキストを読んで全体の流れを把握してください。 Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #1 http://xylocopal.exblog.jp/2950773/ Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #2 http://xylocopal.exblog.jp/2961591/ Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #3 http://xylocopal.exblog.jp/2972669/ 今回使用したスキャナは、EPSON GT-X750。 主走査4800dpiのフラットベッドスキャナです。 2001年発売のフィルム専用スキャナ"Nikon COOLSCAN IV ED"とほぼタメを張る実力を持っています。 [参考エントリ] PC環境は、Window XP SP2 + Nanao FlexScan L565。 使用ソフトウェアは、EPSON SCAN Ver.3.24J、Adobe Photoshop CS3 Ver.10.0.1です。 バージョンにより、微妙にスクリーンショット画像の様子が違うと思いますが、まぁ大差はありません。 EPSON SCANを起動したところです。 プロフェッショナルモードで135判カラーネガフィルムをスキャンするという前提で話を進めます。 基本設定は左のとおりです。 48bitカラーというのは、Photoshopでいうところの16bit/Channelです。RGBと3チャンネルありますから、16bit×3=48bitということになります。 解像度は2400dpi。 135判フルサイズの画面をスキャンすると、だいたい800万画素ぐらいになります。 アンシャープマスク、粒状低減などのオプションは一切OFFです。 Digital ICEも使いません。 Digital ICEを使うと、スキャン速度が極端に遅くなり、ディティール先鋭度もかなり悪くなります。 Digital ICEというのは、デジタル一眼レフのポートレートモード、夜景モード、スポーツモードなどと同じような「お手軽モード」と考えて差し支えありません。男なら(女なら)、ここは思い切って硬派に行きましょう。 だいたい、Digital ICEなんか使わなくても、たいていのレタッチソフトには、コピースタンプツールという機能が付いています。これで、ポチポチごみを消していった方が早いです。イラチの私は断然コピースタンプツール派です。 コピースタンプツールで修正しきれないほどゴミが付いている場合はフィルム管理に問題があるか、スキャナのガラス面が汚れているかのどちらかです。フラットベッドスキャナのガラス面は定期的に無水エタノールなどで掃除した方がいいです。 EPSON SCANの環境設定です。 詳細は前回書いたとおりですが、新しいドライバで変更になった点もあるので、さらっと解説します。 まず、「常に自動露出を実行」のチェックボックスはクリアしてください。ここにチェックが入っていると、sRGB空間に収まらない階調(早い話がディープシャドウ&ハイエストライト)があっさり破棄されます。せっかく階調が豊富なネガフィルムを白飛び黒潰れにしてしまってはもったいないです。 ディスプレイガンマは、Windowsユーザなら2.2、Macintoshユーザなら1.8にします。 以前のドライバは、0.1刻みで、1.9とか2.1などの中間値が選択できました。1.5などガンマを低く設定すると硬調に、2.4などガンマを上げると軟調に設定できたのですが、現在のドライバは1.8/2.2の二択しかありません。 スキャンサンプルは前回同様左の写真です。 上の画像が無補正スキャンの元画像。 下の画像が補正スキャンの上、Photoshopでトーンを整えたレタッチ済み画像です。 この写真、実は20年近く前、1988年の撮影です。ネガフィルムは退色が多いといわれますが、電子的に処理することで、かなりのトーンが復活できます。本来フォトレタッチとはこうした画像処理技術のことを指していました。 以下、プレビューモードの操作法を解説していきます。 スキャン時のトーン調整はプレビューモードの全体表示で画像のトーンを見ながら行います。 サムネイル表示では画像が小さすぎてディティールがよく分かりません。 なお、スキャン実行はサムネイルモードで行います。 全体表示モードではスキャン実行できません。 プレビューモードのヒストグラム調整ダイアログボックスを開いたところです。まったく未調整のデフォルト値ですが、以前のEPSON SCANに比べると、デフォルトでもかなりマシな値を出すようになりました。この程度のヒストグラムであれば、そのままスキャンしても結構使い物になる画像が得られます。とはいえ、それを言っては身も蓋もないので次に進みます。 まず、ヒストグラムの黒端/白端をぎりぎりまで詰めます。 以前のテキストでは山裾に余裕を持って、ブロードな階調を確保する、と書いた部分ですが、現在のEPSON SCANではPhotoshopのレベル補正と同じ操作でOKです。なので、とりあえずは黒端/白端を詰めるという考え方になります。 ただし、EPSON SCANで補正した結果は実際のヒストグラムに完璧に反映されません。大雑把に反映されるだけです。そのため、白一杯まで使いたい場合は、左のように、少し山の内側まで食い込ませた方が結果がいいです。 黒も同様に山の内側に突っ込むと締まりが出ます。ただし、リニアに反映されるヒストグラム補正ではないため、ディープシャドウを捨てる危険もあります。銀塩写真はアンダーに弱く、シャドウのデータはできるだけ大切にしたいです。そのため、ここでは山裾ギリギリに設定しています。 大雑把にしかヒストグラム補正が反映されないというのはプレビューモードの欠点です。ここに現れるヒストグラムは、あくまでも読み取り画素数の少ないプレビューモードにおけるヒストグラムであり、本スキャンとは別物です。サンプリングされた画素だけでは実際の輝度分布が分からないのです。傾向をつかむためのヒストグラムと考えた方がいいかもしれません。 なお、ヒストグラム中央のグレー三角ですが、今回の写真では中庸濃度のネガのため使っていません。しかし、ネガ濃度によっては有効に使えます。特に極端に黒っぽい画像の場合は、グレー三角を左方向にドラッグすると、階調が出てきます。逆に極端に眠いトーンの場合はグレー三角を右方向にドラッグすると、メリハリが出てきます。 このあたりの使い方は、Photoshopのレベル補正と同じと考えていいです。 このエントリの最後に、ヒストグラム補正に関する操作一覧をまとめておきましたので参照してください。 ヒストグラム補正をすると、トーンカーブの形が歪みます。上の例では、黒潰れのトーンカーブになっています。シャドウデータの乏しい銀塩写真の場合、これは非常にまずいので、修正します。 トーンカーブの修正方法ですが、ヒストグラム補正の出力スライダを左右に動かします。この場合は、18から28へ、つまり右移動させると、0%の黒レベルの出力が可能になります。 なお、「出力表示」ボタンを押すと、予想される出力時のヒストグラムが表示されますが、これはあまりアテになりません。予想ヒストグラムで黒端/白端ともまだ切り詰められると思っても、実際には過剰補正となり、黒潰れ/白飛びする場合が多いので、トーンカーブの形で判断した方が無難だと思います。 なお、白側のトーンカーブも直したくなりますが、これはヘタにいじらない方が無難です。出力スライダの白端を右側に動かしたくなりますが、白飛びをすることが多いです。銀塩フィルムのハイエストライトというのはダラダラとヒストグラムの右端に伸びていくのが特徴ですが、これはプレビューウィンドウの大雑把なヒストグラムでは確認不可能です。 この調整で輝度レベルは調整できますが、色味は転んだままです。ネガフィルムのオレンジベースが補正しきれず、青緑色に転んだトーンになっている場合が多いと思います。その場合は下記の要領でヒストグラム、トーンカーブを補正します。 この方法は、サンプル写真のようなはっきりとした黒と白が存在する画像の場合に特に効果的です。 そのかわり、中間色ばかりではっきりとした黒や白がない画像の場合は補正しきれない場合もあります。 真っ赤なチューリップのクローズアップなど、極端に特定の色に偏った画像の場合もうまく補正できません。 方法は、左の図のように、RGB各色別にヒストグラムの黒端/白端を詰めるだけです。 上が補正前。 下が補正後のヒストグラムです。 画像にもよりますが、この操作で、ホワイトバランスはだいたい揃うことが多いです。 撮影時に、"グレースケールチャート"を写し込んでおけば、かなりの確率で元の色再現が期待できます。 別カットで撮影した場合も、補正量をメモしておくことで応用可能です。 ただし、使用フィルムと光源色温度がずれている場合は、単純な色カブリとはならず、補正しきれないこともあります。 デイライト用フィルムで、タングステン電球照明を撮った場合などですね。 こうした場合や、自然光とタングステン電球光のミックス光を撮った場合、色カブリがハイライト、中間調、シャドウとそれぞれに異なるねじれを生じていることがあります。ハイライトは赤に転んでいるのに、中間調はマゼンタ、シャドウはブルーに転ぶ、という面妖なカラーバランスになっていることは決して珍しいことではありません。 こうした場合の補正は、RGB各チャンネルの黒端、中間点、白端をそれぞれ個別に操作して行います。 面倒な補正になりますが、かなり精密に色バランスを操作できるので試してみる価値はあります。 RGB各色のヒストグラムを操作した場合、出力側のトーンカーブが変化します。 極端に1チャンネルだけ潰れているような場合は修正します。 出力スライダを使って、上のトーンカーブを下のトーンカーブに補正するわけです。 場合によっては、トーンカーブ補正をしない方が良いこともありますので、プレビュー画像を見ながら判断してください。 上の操作を行ってもまだ色カブリがある場合は、プレビューウィンドウのイメージ調整で軽く補正しておきます。 この写真の場合、ややグリーンに転んでいるので、補色であるマゼンタをプラス方向に足します。補正量はプレビューウィンドウ(全体表示)で目視確認します。 あくまでも、後ほど行うPhotoshopでのレタッチ量を軽減するためだけの処置ですから、軽い補正量で充分です。 この後、本スキャンを実行します。 本スキャンの後に、Photoshopによるレタッチでトーンを整えます。 ここは男らしく(女らしく)フルマニュアルで、といきたいところですが、あまりにも面倒なのでズボラをすることにします。 ここで紹介するズボラ法は、Photoshopによる究極の自動カラー補正であり、自動とはいいながら、かなり詳細に微調整ができる方法です。 この方法では白飛び/黒潰れの程度をリアルタイムで確認しながら、結果を精密にコントロールできます。 まず、スキャン画像を開き、[イメージ]-[色調補正]-[レベル補正]と選択し、レベル補正(ヒストグラム補正)ダイアログボックスを出します。 これは、フィルムの黒枠をトリミングツールで削除した後のヒストグラムですが、なかなか良い形になっています。黒端はまだ詰められる余裕がありますが、銀塩写真の場合、ぎりぎりまで詰めない方が安全です。この程度の間隙なら上等の部類だと思います。 白端は厳密に言えば白飛びしています。銀塩写真特有のだらだらと伸びるハイエストライトですね。すべてのハイエストライトを8bit/channelのsRGB空間に押し込むことは不可能なので、いずれ捨てることになります。捨てるにしても自分の判断で捨てたいです。とりあえず、この程度残してあれば、レタッチ用素材としては上々だと思います。 ヒストグラムの形は良くてもまだまだ妙な色になっていることは多いと思います。この妙な色とレベルを同時にレタッチするのが「自動カラー補正オプション」です。 レベル補正ダイアログボックスのオプションボタンを押して左のダイアログボックスを出します。まず「アルゴリズム」を選択します。アルゴリズムによって色味が変わりますが、一番気に入ったトーンを選択します。 「モノクロコントラストの強調」というのは、単純にヒストグラムの両端を切りそろえるだけのモードで色味は変わりません。良い色味でスキャンできていた場合は、このモードでメリハリのあるトーンが再現されるはずです。 「チャンネルごとのコントラストを強調」というのは、スキャン時に行ったRGB各チャンネルのヒストグラム両端を揃える作業を自動的に行うモードです。ヒストグラム両端を揃えた場合にも、このモードを選択することで、劇的にトーンが変わる場合があるので試してみる価値はあります。 このダイアログボックスで、試してみるべき組合せは以下の6つです。どの組合せを選んでも完璧なトーンにならないことが多いですが、一番違和感のないもの、一番気に入ったものを選べばOKです。
次に、白飛び黒潰れの量を調整します。コントロールするのは、ターゲットカラーとクリッピングの部分です。 シャドウのクリップ量は黒潰れの程度をコントロールします。 デフォルトは0.10%ですが、ここを0にすると、黒潰れはなくなります。 もちろん、スキャン時に潰れていなければ、の話ですが。 ハイライトのクリップ量は白飛びをコントロールします。 これもデフォルト値は0.10%です。 ここを0にすれば、白飛びはなくなります。 こちらもスキャン時に飛んでいなければの話です。 この両者は、破棄するシャドウデータの量、破棄するハイライトデータの量を決める部分です。 数値を大きくすれば破棄する量が増え、黒潰れ、白飛びが顕著になります。 数値を増やすということは、ヒストグラムの両端を切りつめていくということです。 シャドウデータ、ハイライトデータともに破棄することはできますが、追加することはできません。 無から有を生じさせることは不可能ということですね。 そのため、黒端/白端に多少余裕を持たせたスキャン画像を作るわけです。 シャドウ、ハイライト、いずれのクリップ量も数値を変えれば、リアルタイムで画像に反映されます。 0.05%などにすると、より低コントラストの白飛び/黒潰れの少ないトーンになります。 0.20%などとすると、コントラストが強調されたくっきりしたトーンになります。 この際、レベル補正ダイアログボックスのヒストグラムもリアルタイムで描き換えられます。 そのため、ヒストグラムの黒端、白端を監視しながら、クリップ量を可変することができ、非常に便利です。 写真にもよりますが、一般に多少白飛びさせた方が、コントラストのあるシャッキリした画像になることが多いですが、その量が精密にコントロールできるので滅法便利です。 「自動カラー補正オプション」適用後のヒストグラムです。 さほど黒潰れもしておらず、白飛びも少なく、まずまず理想に近いヒストグラムです。 ただ、色味として、まだ多少グリーンが強いので、カラーバランス補正で修正します。 グリーンが強い場合は単純に補色であるマゼンタをプラスすればOKです。 ここまで、「ちっとも補正した画像が出てこないじゃないか、なめとんのか、われ!」と思われた方も多いかと思います。^^ 以下、一気に公開します。 並べてみないと、微妙なトーンの違いが分からないので、こういう回りくどいことをしています。 どうか御容赦ください。 何の補正も加えず、ただスキャンしただけの画像です。まぁ、何というか眠い画ですね。こうした画像を見て「このスキャナは安物だから駄目なんだ」と判断しないように。ちゃんと使えばまともなトーンが出てきます。 プレビュー画面でヒストグラムの両端を詰めた後の画です。多少シャッキリしてきました。 プレビュー画面でトーンカーブを修正し、黒潰れを回避した画です。あまり違いがよく分からないと思います。^^ プレビュー画面で、RGB各色のヒストグラムを調整した上、イメージ調整を行い、マゼンタをプラスした画です。 Photoshopで、自動カラー補正オプションを適用した後の画です。俄然シャキッとしてきました。 カラーバランス補正で、マゼンタをプラスした画です。コピースタンプツールでゴミもポチポチ直します。これで大雑把なレタッチは終了です。あとは煮るなり焼くなり好きに補正すればOKです。 黒猫の胴体シャドウが潰れていますが、これは撮影時にアンダーだったためです。もう半絞り開ければ良かったですね。 デジタルなら、これぐらいのシャドウは楽勝で起こせるのですが、銀塩の場合は起こしてもディティールは出てきません。 いくらカラーネガのラチチュードが広いといっても、あくまでもハイライト側の話であり、シャドウは本当に潰れやすいです。銀塩ネガのアンダーはレタッチでは救えません。 最後に、EPSON SCANのヒストグラム調整の修正パラメータ一覧をまとめておきます。 Aは黒端。 左に動かすと、階調は豊かになりますが眠くなります。 右に動かすと、コントラストは強くなりますが、破棄されるシャドウデータが増え、黒潰れします。 Bは中間点。 ガンマを操作する部分です。 左に動かすと、眠たいけれど明るく淡い画面になります。 右に動かすと、コントラストが強く濃い画面になります。 Cは白端。 左に動かすと、破棄されるハイライトデータが増え、白飛びしますがメリハリの付いた明るいトーンになります。 右に動かすと、眠たいけれど、ハイライトの階調が豊富に残ります。 Dは黒浮のトーンカーブ。 眠たいですが、シャドウの階調は豊富です。 ハイキー写真にする際は、こうしたトーンカーブにします。 Eは適正トーンカーブ。 Fは黒潰れのトーンカーブ。 コントラストは出ますが、シャドウデータは失われます。 EPSON SCANのヒストグラム/トーンカーブ調整のまとめと書きましたが、要はフォトレタッチの基礎のまとめですね。 なお、グレーバランス調整で、スポイトを使って無彩色と思われるポイントをクリックする方法もありますが、銀塩粒子があるために、なかなか一発で良いトーンにはなりません。 サンプリングポイントを5×5pixelsにしても成功率はあまり高くありません。 スポイト系の一発レタッチツールというのは便利そうですが、実用になるシーンは少ないですね。 とはいえ、手間のかかることではありませんから、ものは試しでスポイトを使ってみるのはいいと思います。 当たれば大儲けです。^^
by xylocopal2
| 2008-04-07 15:37
| Software
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