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2007年 06月 20日 南洋生まれのM42一眼レフ Voigtlander VSL1 TM



1974年に発売されたM42マウント一眼レフ、Voigtländer VSL1 TMです。
フォクトレンダーといえば、18世紀創業を誇る、ドイツ屈指の名門カメラメーカーですが、VSL1が作られた時代には、すっかり経営が左前となり、フォクトレンダーの商標権はローライに譲渡されてしまいました。
そのため、フォクトレンダーとはいっても名ばかりで、VSL1の実態はローライ・シンガポール工場製造のカメラとなっていました。
年代的には、コンパクトカメラの名機、"Rollei 35S""Rollei 35T"あたりと同期に当たります。

VSL1には、血を分けた兄弟機がいくつもあります。
"Zeiss Ikon SL706""Ifbaflex M102 TM""Rolleiflex SL35M"、前者2つは銘板以外に見分けがつきません。
実際、ペンタ部の銘板は彫込ではなく、シールが貼ってあるだけです。
シールを変えるだけで、Ifbaflex M102になったり、Voigtländer VSL1になったりしたのではないか?と勘ぐってしまいます。

 Voigtländer VSL1 TM仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  マウント: M42 (プラクチカスクリューマウント) 定位置ロックピン付
  シャッター: 機械式横走り布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, X, FP, 1/2-1/1000sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、スプリットマイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: ?
  ファインダー視野率: ?
  露出計: CdS TTL中央重点平均測光 開放/絞込測光
  測光レンジ: EV+2 - EV+18 at ISO100
  シンクロ接点: 1/40sec.
  バッテリー: 1.35Vボタン型水銀電池 (VARTA V625 PX, MALLORY PX625 etc.)
  外形寸法: 146×99×49mm
  重量: 775g
  発売年次: 1974-1976年
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Voigtländer VSL1は重厚長大なカメラです。
うちにあるM42一眼レフの中では一番重く、一番背が高いです。
"Zeiss Ikon Contarex Super"には負けますが、1970年代のMF非AE一眼レフとしては、最重量級の方ではないでしょうか。
「弁当箱のごとき巨大さ」、「漬け物石代わりになる重さ」、「護身用の武器として最適」などという比喩が、これほどよく当てはまるカメラはありません。
そのためもあって、作りは非常にしっかりとしています。
金属部分は分厚く、各部動作は滑らか、グッタペルカ(貼皮)も非常に高品質で、全体的な雰囲気は東ドイツの重戦車、"Pentacon Super"に通じるものがあります。




マウントは、開放測光対応の拡張M42マウントです。
フランジ面は幅広で、グッタペルカが貼ってある上、12時30分の位置にレンズ固定用ロックピンがあるため、M42マウントといえども使えるレンズに制限があります。
絞り環にツメが付いているEBC FUJINON、ピンが付いているMamiya Sekor SX、電気接点が突出しているCarl Zeiss Jena electricを付けると、ロックピンと干渉し、最後までねじ込むことができません。
開放測光対応のM42マウントレンズやボディの相性はなかなかシビアです。

マウント向かって右下の棒状の部品は、絞り込みスイッチです。
開放測光非対応レンズを使うときは、この棒を押し込み、絞込測光で露出を測ります。
このカメラは開放測光対応一眼レフですから、レンズの絞り値をボディに伝えるギミックが付いています。
マウント向かって左側に見えている、三角形の金属片がそれです。


この金属片は、レンズ側フランジ面の円弧状のくぼみに当たるようになっています。このくぼみは、押してみると絞り値に応じて深さが変わることが分かります。開放が一番浅く、F16が一番深くなっています。つまり、深さによる絞り値検出という方法をとっているわけです。

絞りリング外周のツメなどによる方法に比べると、精度的に大丈夫なのか?と心配になるほど頼りないギミックですが、純正レンズである、"Voigtländer Color-Ultron 50mm F1.8"を付けてテストしてみたところ、特に問題なく開放測光で使えました。
"Pentacon Praktica PLC3"の電気接点といい、"Pentacon Super"の押しピン方式といい、東も西もドイツ製カメラはユニークな絞り値伝達機構を持つものが多いです。




威風堂々のトップカバーです。
アイピースには逆入光防止のためのシャッターが付いています。
覗いてみると、そこそこの程度のプリズム腐蝕がありました。
シャッタースピードダイヤルは巻き上げレバーと同軸になっています。
巻き上げストロークはかなり長く、200度ぐらいはありそうです。
巻き上げレバーの上に見える"TM"の文字は、"Thread Mount = ねじ込みマウント"を意味しています。
Voigtländer VSL1にはRollei QBMバヨネットマウントのものもあり、区別するために"TM"のロゴを付けたのでしょう。
TMロゴは、VSL1の原型、"Zeiss Ikon Icarex 35TM"にも付いています。
"Voigtlnder Bessaflex TM"のTMロゴは、たぶんこのあたりからパクったのではないか?と思います。


シャッターダイヤル下の小窓は、フィルムカウンターです。
透明部分が曇っており視認しくいのですが、現在は"13"を示しています。
このカウンター、巻き戻し時に減算表示可能です。
36、35、34、33‥‥、という感じですね。
そのかわり、フィルムを入れずに空シャッターを切る場合は、いくら巻き上げてもカウントされません。


巻き上げレバーの根元に見えるのは、露出計のスイッチです。絞り込み測光オンリーのカメラであれば、測光レバーが露出計スイッチとなるので、特に露出計スイッチは必要ありませんが、VSL1は開放測光カメラであるため、独立した露出計スイッチが必要になるのです。

露出計スイッチは、巻き上げレバーを引き出すとONになります。
巻き上げレバーを手前に押す、つまり格納状態にするとOFFになります。
レバー軸にスイッチ機能を仕込まず、レバーを押しつけることで露出計をON/OFFさせるのは、なかなかチカラワザの系統だなあ、と思います。
絞り値伝達ギミックやフィルムカウンターに関しては凝ったことをしているのに、露出計スイッチについてはいきなり泥臭い方法をとっています。こちらの方が動作確実な感じはしますが。ドイツ人も必ずしも論理的整合性万全というわけではないようです。


巻き戻しクランクの回りには、露出計の感度設定ダイヤルがあります。右下に見える矢印は、感度設定ダイヤルロック解除レバーです。このレバーを矢印方向に動かすと、感度設定ダイヤルを動かすことができます。Bessaflex TMもこの位置に感度設定ダイヤルがありますが、ノンロックのため、いつの間にか動いてしまうことがあります。この部分に関しては、VSL1の方が使いやすいです。

左下に見えるメーターは露出計です。もちろん、ファインダー内にも露出計指針がありますが、いちいちファインダーを覗かなくてもメーターを見ることができるように、ということだと思います。Revueflex SD1にも同等の機能がありますから、ヨーロッパではこうした露出計が好まれるのかもしれません。
露出計は、製造年代とCdS受光素子であることを考えれば非常に優秀です。針の反応はなかなか早いし、露出値も正確です。正確といっても、私の体感露出と矛盾することが少ない、というだけのことですが。





裏蓋を開けると、絢爛豪華な"結晶塗装"が現れます。
結晶塗装は、縮緬塗装、チジミ塗装などとも呼ばれるもので、1950~1960年代のカメラでよく見られたものです。
1970年代に入り、コストの問題からか、ほとんど見かけなくなりましたが、非常に高級感があり、美しいものです。

シャッターはオーソドックスな布幕横走りフォーカルプレーンです。
ゴツくさいボディに似合わず、シャッター音は柔らかく静かです。
同時代の東独製カメラ、"VEB Pentacon Praktica PLC3"あたりのガサツな大音響に比べるとはるかに上品といえます。

巻き上げスプールには、白いプラスチック製のローディングパーツが付いています。
あまり見かけないタイプですが、なかなか優秀です。
東独プラクチカの複雑怪奇なイージーローディング機構より、よほど簡単にフィルムを巻き込むことができます。


バッテリー室です。蓋はコインなどを必要としないプラスチック製のもの。かなり液漏れがあり、緑青が湧いていましたが、幸いなことに電気的には問題ありませんでした。
バッテリーは、1.35Vの水銀電池、PX625、PX13、MR-9などと呼ばれるものを使います。"VEB Pentacon Praktica MTL5"などと同じバッテリーです。しかし、水銀電池は製造中止となっているため、現在では入手困難です。代替品としては、米国Wein社の空気電池、"Wein MRB-625"が良さそうに思えます。外寸、出力電圧などがPX625とまったく同じですし、価格も安価です。


このカメラ、南アフリカからやってきました。
喜望峰、金やダイヤモンド、アパルトヘイトで名を馳せた南アフリカです。
ebay歴7年の私も、アフリカのセラーから買ったのは初めてです。
出品者の住所が南アフリカとなっていたのを面白そうだと思い、入札してみたのです。
つくづく物好きです。
落札価格は相場よりかなり安く、カラーウルトロン50mm/F1.8付で$80でした。
送料は$40。やや高めですが、南アフリカですから仕方がないですね。

果たして無事に届くのか?と思いましたが、2週間ちょうどで届きました。
アメリカ本土やイギリス、ドイツとさほど変わりません。
箱には、南アフリカらしいカラフルな切手が貼り付けてありました。
こうしたことを楽しいと思える人は、ebayにはまるようです。
次は、南米の出品者から買ってみようかと思っています。
南米を押さえると、南極を除く全大陸からカメラを買ったことになるので。^^

それにしても、西ドイツのメーカーが、シンガポールの工場で製造し、南アフリカのユーザーに売られ、日本にたどり着く。
なかなか数奇な運命のカメラではあります。
南アフリカに達する前に、さらにいくつかの国を経由した可能性もあります。


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こちらも併せて御利用ください。
 "Xylocopal's M42 Thread Mount Cameras & Lenses"
  http://www.xylocopal.com/m42/
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by xylocopal2 | 2007-06-20 21:00 | Hardware
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