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2007年 05月 05日 不遇のジャンクカメラ YASHICA FFT




先週、"丸栄スカイル 中古カメラ市"で拾ってきたヤシカFFTです。
例によって、ジャンク箱出身のカメラで、3000円なり。
今回、拾ってきたのはボディのみです。
上の写真のレンズは、手持ちのオートヤシノンDX50mm/F1.7。
年代的には、カメラより5~6年古いレンズです。
このレンズも去年秋、中古カメラ市のジャンク箱から拾ってきました。
今頃は、手を取り合って、「ここにいたのか兄弟よ。ヤシカの工場を旅立ってから幾星霜、再びまみえることができるとは。わしゃあ涙がちょちょぎれてかなわんよ。これからも一緒に写真を撮ろうなあ。見ろ、東海道は日本晴れだあ!」などと会話しているのかもしれません。^^

中古カメラ市のジャンクカメラというのは、単に古いカメラをさす言葉ではありません。
たいていは、まともに動かない、ホコリまみれ泥まみれのガラクタです。
ジャンクカメラは、こんな感じあんな感じでゴロゴロ無造作に展示されており、誰でも手にとって触れることができます。
お客は心ゆくまで状態や動作を確認できるため、さらに動作がおかしくなるカメラもあるだろうと思われます。

一般に、ジャンクカメラコーナーには、「故障品/部品取用/研究用」などと記されたラベルが貼られ、不動品であることを明示しています。
しかし、本当に壊れたものばかりなのか?といえば、そうでもありません。
実際には、程度はかなりバラバラで、外観が汚いだけでまともに動くものから、小難ありの実用品、大難ありの稼働品、どうやっても動かない不動品、金属とプラスチックでできたオブジェ、不燃ゴミに至るまで、実に様々な状態のカメラがあります。
「玉石混淆」という言葉が、これほどふさわしい場所もないでしょう。
それゆえ、ジャンクコーナーの人気は高く、中古カメラ市では最も人だかりが多い場所となっています。
一攫千金を狙うトレジャーハンター、と書くと格好良いですが、実際には、間違って動いてしまったら儲けもの、と考えるセコいお客が多いように思われます。

このYASHICA FFT、ジャンクにしては綺麗でした。
セルフタイマーレバーがモゲている以外にパーツの欠品はなく、バッテリー室の蓋もちゃんと付いていました。
ただし、ボディ左側に軽いヘコミがありました。おそらく、落下させたのでしょうね。
ヘコミやアタリは、外観的なこともさることながら、落下品であることを暗示するため、機能的にも問題がある可能性が考えられ、ジャンクの中でも嫌われることが多いです。

動作チェックをしてみたところ、シャッターは、バルブから1/1000sec.まで全て動きます。
1/30sec.だけ異音があり、若干の粘りも感じましたが、あまり深刻なものではなさそうです。
シャッター幕はカビが生えた痕跡がありますが、物理的にはしっかりしており、穴は空いていません。
自動絞りの連動機構はきちんと動作します。
フィルム給装関係は、とりあえず問題なさそうです。
巻き上げは重いながらも普通に動作し、カウンターも異常はありません。
このカメラ、落下したにしても低い場所から軽く当たっただけのように思われます。

ファインダーは驚くほど綺麗でした。
この年代の一眼レフは、プリズム腐蝕を起こし、覗くと黒い帯が見えるものが多いのですが、このYashica FFTは非常にクリアで、プリズム腐蝕のかけらも見えません。
これはなかなか当たりかも?
ネジ頭やカニ目も素人が強引にこじ開けようとした痕跡はなく、素直に寿命を迎えた自然死のように見えます。
露出計は電池が入っていなかったので確認できませんしたが、電池室に液漏れはなく、ひょっとして?という期待を抱かせます。
というわけで、3000円払って、このカメラを引き取ってきたわけです。






Yashica FFTは、M42マウント、MF絞込測光マニュアル露出の一眼レフです。
絞り込みレバーは、レンズマウント基部左側にあります。
Pentax SPなどと同じ位置ですが、絞り込み&露出計スイッチONはレバーを押下して行います。
個人的には、絞り込みレバーを押し上げるPentax SPなどより、FFTの押下するタイプの方が好きです。

Yashica FFTは、M42マウント一眼レフとしては最終世代に属するカメラである、という記述を時々見かけますが、私が持っている8台のM42マウント一眼レフの中では一番古いものになります。
コレクションの方針がおかしいのですね。^^
FFTが発売されたのは、1973年。
発売後ほどなく、ヤシカはM42マウントを捨て、Y/Cマウントに移行していますから、生産数はそれほど多くはなかっただろうと思われます。
とはいえ、激レアというほどの稀少カメラではなく、今回の中古カメラ市でも3台ほど見かけました。
値段もいたって安く、間違っても、箱入美品3万円などという値段にはなりません。

1973年発売というと、"Asahi Pentax SPF"と同期のカメラになります。
当時、Pentax SPFの価格が、58500円(SMC Takumar 50mm/F1.8付)であったのに対し、Yashica FFTは、41000円(Auto Yashinon DS 50mm/F1.9付)でした。
どのようなステータスのカメラであったかは、この価格設定の違いを見れば一目瞭然ですね。


 YASHICA FFT 仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  レンズマウント: M42 (プラクチカスクリューマウント)
  シャッター: 純機械式横走り布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, 1-1/1000sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、マイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: 0.89倍
  ファインダー視野率: 90%
  露出計: CdSセル 絞込TTL平均測光、定点合致指針式
  シンクロ接点: 1/60sec.
  露出計バッテリー: H-C型水銀電池×1
  外形寸法: 145×94×50mm
  重量: 660g
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見れば見るほど地味なカメラです。
スペック的には過不足無くまとまっているのですが、製品としての華、色気、魅力がまったく感じられません。
同年代の"Pentax SPF"には、完成された機械が見せる枯れきった美しさがあるのに対し、Yashica FFTは無骨に大きく重たいばかりで、センスもコンセプトも感じられない茫洋としたデザインです。
基本デザインは悪くないのに、ディティールの詰めが甘く、全体としては野暮くさく鈍重なデザインとなっています。
同世代の"OLYMPUS OM-1""MINOLTA XE"などのフレッシュで颯爽としたデザインに比べると、Yashica FFTのやる気の無さは際立っており、旧共産圏の一眼レフに通じる無常観が漂っています。

ヤシカはFFTを発売した翌年、カール・ツァイスと業務提携し、Y/Cマウントに移行します。
FFTの2年後、1975年に発売された"CONTAX RTS"のデザインは斬新かつ格調高いもので、現代の水準から見ても非常に高度なレベルにあります。
工業デザインかくあれかし、の見本のような、美しさと機能性が両立した秀逸なデザインです。
ポルシェデザインに負うところが大きいのでしょうが、ヤシカのやる気を充分に感じとることができます。
同年発売のメカニカルシャッター機、"YASHICA FX-2"にしても、FFTをY/Cマウント化したモデルにすぎないのに、よほど垢抜けたデザインに感じられます。
それに引き替え、FFTは‥‥。
企業の気概、意欲といったものは製品デザインに反映されるのでしょうね。
YASHICA FFTは、誰にも愛されないまま消えていった悲運のカメラだったのかなあ、と思われてしかたがありません。






トッププレート上の配置は、この時代のMF一眼レフの典型的なそれであり、私世代のカメラマニアの場合、取説要らずで操作できます。
シャッタースピードは、バルブおよび1sec.~1/1000sec.。
Yashica FFTは、この時代の機械シャッター式一眼レフにしては珍しく、中間シャッター速度が使えるそうです。
1/90sec.とか1/320sec.が使えるらしいのですが、計算が面倒くさいし、中間速度にはクリックがなく設定値がよく分からないので、たぶん私は使わないと思います。

フィルム感度設定は、左側の巻き戻しクランク基部にあります。
"FILM SPEED"と記されている部分ですね。
露出計はCdSセル絞込測光、定点合致指針式です。
露出計が動くかどうかは賭だったのですが、接点を磨き、アルカリボタン電池LR44を1個入れてみたところ、見事に動きました。
CdSセンサーですから、モサ~ッとしか針は動きませんが動かないよりよほどマシです。
大雑把に露出計校正を行ってみましたが、かなりアンダー目に出るようです。
ISO100フィルムに対して、ISO64に設定するとちょうどいいぐらいですね。
"Xylocopal's Photolog 2007/03/24 オールドカメラの露出計チェック"に書いた、Praktica MTL5やPentax SPIIなどと同傾向です。
いずれも、CdS露出計のカメラですが、CdSというものは、20~30年経つとアンダー目に劣化するのでしょうか。






シャッターは、機械式ゴム引き布幕横走りフォーカルプレーンです。
この時代、ヤシカの一眼レフはM42マウントであっても、電子制御式金属幕縦走りフォーカルプレーンが多かったのですが、FFTだけは異端であるようです。
ヤシカの主力製品は、"ELECTRO"銘が付く電子制御シャッターAEカメラ、ロウソクの明るさでも綺麗に撮れるがウリでしたから、機械式シャッターのマニュアル露出カメラは社内的にも二線級扱いだったのでしょうね。

巻き上げスプールは優秀です。
スリットにフィルム端を2~3mm突っ込むだけ。
あとは、レバーをグイグイ巻き上げれば、トラブルフリーで巻き上げられます。
へたなイージーローディングカメラよりよほど簡単で確実です。
ペンタコンプラクチカシリーズには、必ずペンタコンオートローディングシステムというイージーローディング機構が付いていますが、あれの100倍以上、FFTの方がイージーローディングといえます。
要するにプラクチカのローディングは凝りすぎ、FFTの方はシンプルイズベスト。
機械に対するドイツ人の考え方、日本人の考え方の違いなのかなあ、と思います。

加えて、おおかたの一眼レフが膜面外側巻なのに対し、FFTのローディングは膜面内側巻です。
膜面内側巻は常に乳剤面を内側にして巻き込みますから、瞬間裏蓋開放に対して強いような気がします。
気がするだけで理論的実践的裏付けがあるわけではありません。
まぁ、あまり褒めるところがないカメラなので。^^






とりあえず、フィルムを詰めてテスト撮影に行ってきました。
36コマのうち何枚か、上の写真のような、画面上部に白っぽい縞のような帯が入った写真が撮れました。
こ、これは!
あれだ!あれに違いない!

 「たたりじゃ!ヤシカの怨霊のたたりじゃ!」

連休中、BSシネマで横溝映画を見過ぎただけです。^^
これは、心霊写真でも何でもありません。
ただの光線漏れ。
漏れ方が微妙なので、典型症状しか知らないと、「ヤシカの怨霊」に見えてしまいます。
大体、光線漏れ箇所の見当は付いていたので、モルトを張り替えてみることにしました。


怪しいとにらんだのは、ここです。
ヒンジ部ではなく、パトローネ室上蓋の接合部。
本来、モルトが貼られていた場所ですが、加水分解により、ほとんどのモルトが失われていました。
1980年代カメラのモルトは、加水分解途中のため、水分が多く感じますが、このカメラのように1970年代初頭製の場合は、水分が完全に抜けてカラカラに干涸らびてしまうようです。
加水分解というより風化という感じですね。


以前使い残したモルトの切れ端を接合部の大きさに合わせて貼り付けてみました。
これだけのことで、ヤシカの怨霊はそれ以後現れなくなりました。どれだけ明るい場所をウロウロしても大丈夫、まったく光線引きすることはありません。
モルトというものは、実に霊験あらたかです。キョンシーの護符以上に効力抜群です。
もっとも、必要があるからこそ、ここにモルトが貼られていたわけですが。


ミラー受けのモルトも完全に風化してなくなっていました。こちらは、光線漏れというより、ミラーが当たって砕ける方が心配です。ついでなので、こちらも新しいモルトに交換することにしました。


本来のモルトは「コの字」の形で固定されていたようですが、工作が面倒くさかったので、大胆に省略することにし、「一の字」型で貼り付けてみました。今のところ、特に問題はないようで、シャッター音は少しだけ静かになりました。



3000円のYASHICA FFT、勝負はどうだったのか?といえば、私的には充分勝利だと思っています。
とりあえず、まともに写真が撮れるようになりましたし、ブログのネタにすることもできました。
何より、後玉突出の激烈なヤシカ製M42レンズを安心して使えるというのはいいです。
Bessaflex TMあたりで、この時代のヤシノンレンズを使うと、ものの見事にレンズ後端がミラーに当たります。
しばらくは手元に置いておこうと思います。
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by xylocopal2 | 2007-05-05 19:48 | Hardware
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