Copyright © 2004-2010 Xylocopal All Rights Reserved
Top
2007年 03月 23日 私的原点 Asahi Pentax SPII




"SMC Takumar 55mm F1.8"が寂しそうにしていたので純正ボディを買ってやりました。
Asahi Pentax SPII。
1974年10月発売の、ペンタックスとしては最後のM42スクリューマウントMF一眼レフ。
ベストセラー一眼レフ、"ASAHI PENTAX SP"のリバイバルモデルです。

スペック的には、SPIIとSPでは何も変わりません。
外見的には、アクセサリーシューの有無がSPIIとSPの識別ポイント、ということになっています。
しかし、実際には、アクセサリーシュー以外にもディティールデザインがいろいろ異なっています。
一番違っているのが、ペンタ部とトップカバーの接合部。
PENTAX SPでは、接合部に段差がありますが、SPIIにはありません。
ペンタ部の形状も異なり、SPIIの方がより現代的なデザインとなっています。
SPIIは、デザイン的にはSPよりも"Asahi Pentax SPF"と共通点が多いカメラです。

Asahi Pentax SPF‥‥、懐かしいカメラです。
初めて使った一眼レフ。
高校時代、"名古屋今池の松屋カメラ"で新品を買いました。
私がカメラの基本、写真撮影の基本を学んだのはPentax SPFを通して、といって過言ではないです。
絞りとシャッタースピードとの関係、絞りと被写界深度の関係などですね。
Pentax SPFで撮った写真は、"Xylocopal's Photolog 2005/04/03 尾張屋猫"にあります。
Pentax SPFとSPIIの違いは、前者が開放測光対応、後者が絞込測光オンリーというだけで、外観的にはほとんど同じです。
そのため、Pentax SPIIを触っていると、33年前、初めて使った一眼レフのことをあれこれ思い出します。


 ASAHI PENTAX SPII 仕様一覧
 ------------------------------------------------
  フォーマット: 135判 24×36mm
  レンズマウント: M42 (プラクチカスクリューマウント)
  シャッター: 純機械式横走り布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, 1-1/1000sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、マイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: 1.0倍 (at 55mm)
  ファインダー視野率: 93%
  露出計: CdSセル 絞込TTL平均測光、定点合致指針式
  測光レンジ: EV+1.7- EV+18
  シンクロ接点: 1/60sec.
  露出計バッテリー: H-B型1.35V水銀電池×1
  外形寸法: 143×92×50mm
  重量: 625g
 ------------------------------------------------






Pentax SPIIはM42スクリューマウントです。
このカメラが発売された1974年当時は、プラクチカマウント、Pマウント、ペンタックスSマウントなどと呼ばれ、同時代的にはM42マウントという言葉は聞いたことがありません。
M42という呼称が使われ出したのは、1989年のベルリンの壁崩壊後のような気がします。

いずれにしても、当時、こうしたネジ式マウントはすでに時代遅れのものとなっていました。
Nikon、Canon、Minolta、OLYMPUSなど主要メーカー製一眼レフはバヨネットマウントになっており、ネジ式マウント一眼レフを作っていたのはペンタックスとフジカぐらいのものだったと思います。
それでも、SPF/SPIIの競争力は充分ありました。
道具としての扱いやすさ、機械としての堅牢性や信頼性、レンズの光学的優秀さ、コストパフォーマンスの高さ、そうしたものがペンタックスの人気を支えていたように思います。

そのペンタックスもSPIIの発売後半年あまり経った1975年6月に、スクリューマウントに決別を告げました。
"Pentax K2""Pentax KX""Pentax KM"の3機種を発売し、バヨネットマウントであるKマウントに移行したのです。
当時、スペックオタだった私は、迷わずSPFからKXに乗り替えましたよ。
高校生というものは、ものの本質が分からない、何事も形から入る阿呆タレですから。^^
今から思うと、SPFとKXの差なんて微々たるものです。
マウント以外はほとんど同一といってよいカメラでした。






画面中央やや下に見える"SW"と記された黒いパーツが測光スイッチです。
"Voigtlnder Bessaflex TM""CHINON CS-4""Revueflex SD1"などと同じく、マウント基部左側に付いています。
スライドスイッチを押し上げると絞り込まれ、露出計のスイッチが入りロックされる、というシークエンスで動作します。
こうした形式の測光スイッチの元祖は、Pentax SPです。
SPが良く売れたため、後発各社が同じインターフェースにしたのだろうと思います。

私は、絞り込み測光は好きですが、このスタイルの左手操作押上ロック機構付測光スイッチが使いやすいと思ったことは一度もありません。
私が使いやすいと思うのは、右手操作、ロック機構なしのものですね。
"VEB Pentacon Praktica MTL5/MTL50""FUJICA ST605II"あたりのものが使いやすいです。
理想としては、位置はFUJICA ST605II、機能はPraktica MTL5というところでしょうか。
ST605IIの絞り込みボタンは、露出計スイッチと連動していないので、測光の際には、右手中指で絞り込みボタンを押しながら、人差し指でレリーズボタン半押し、というアクロバチックな操作を要求されます。
まぁ、慣れればどうってことはないのですが。

前述のとおり、ペンタ部とトッププレートの接合部に段差はなくスッキリしています。
接合部段差があるのは、1950年代~1960年代のペンタックスであり、1970年代のES、ESII、SPF、SPIIにはありません。
ペンタ部に記された六角形のマークは、当時の旭光学のブランドロゴ。
AOCo = Asahi Optical Co,.、旭光学の英文表記ですね。
"Pentax ME"あたりまで、このロゴマークは付いていたように思います。






トッププレート全景です。
巻き上げレバーは無垢の金属製で、やや古典的デザインの優雅なカーブを描いたものです。
33年ぶりにこの巻き上げレバーを操作してみましたが、実に滑らかです。
指がかりが良いところに刻み目が付いており、吸い付くような操作感です。
普及機のSPIIでこうした素晴らしい仕上げをやられては、中級ドイツ製カメラが競争力を失うはずです。

シャッタースピードダイヤルの文字は彫込です。
60、125、250と言った数字が機械加工で彫り込まれています。
おそろしく丁寧な仕上げが施してあり、仕上げの美しさに唸ってしまいます。
1980年代の一眼レフでは、ほとんどが印刷あるいはアルミ板貼付に置き換えられてしまいました。
フィルム感度表示窓はレンズ状になっており、文字が大きく見えるようになっています。
このあたりの芸の細かさ、作りの良さは、「モノ作り日本」が到達した頂点の姿です。
1990年代のプラスチック製AF一眼レフの方が高機能高性能であることはたしかですが、道具としての魅力は1970年代のMF一眼レフの方がはるかに高いのも事実です。

ファインダー倍率は1.0倍、つまり等倍です。
視野率は93%と低いものの、明るく大きな視野像は、APS-Cデジタル一眼レフから比べると別世界の快適さです。
この時代の一眼レフのファインダーは、ペンタプリズム腐蝕による黒筋が見えるものが多いのですが、今回入手した個体は信じられないほどクリーンです。
湿度の低いヨーロッパやアメリカ西海岸で過ごしたカメラなのでしょうか。
Pentax SPIIは日本国内でも売られましたが、主要マーケットは海外でしたから。

露出計はCdS素子ゆえに指針の反応はトロいです。
定点合致式のため、どれぐらいアンダー/オーバーかが感覚的に分かるのは使いやすいです。
追針式露出計より定点合致式露出計の方が使いやすい、という人は多いのではないでしょうか。
ただし、指針式のため、暗所ではさっぱり針が見えません。
メータードマニュアルカメラの露出計は3LED定点合致式が一番です。
そうした意味では、ファインダーを覗かなくても露出が分かる、"CHINON CS-4""Revueflex SD1"あたりが最も使いやすい露出計インターフェースを持つように思います。






シャッターは、ゴム引き布幕横走りフォーカルプレーンです。
この時代、金属幕縦走りフォーカルプレーンシャッターを採用していたカメラはすでにいくつもありました。
ペンタックスは、シャッターに関しては保守的で、Kマウントに移行してからも、"KX""KM""MX"などのマニュアル露出カメラではゴム引き布幕フォーカルプレーンシャッターを採用していました。
メタルフォーカルプレーンに比べると、耐久性で劣りそうなイメージがある布幕フォーカルプレーンですが、30数年経った今でも意外と大丈夫で、低速から高速まで何ともありません。
この時代のペンタックス製一眼レフで、シャッターまわりの故障というのは、あまり聞いたことがありません。
ペンタプリズムの腐蝕や露出計の故障はよく聞きますが、シャッターだけは完動品という個体が多いのです。






フィルムゲートからミラーボックス~レンズ後端を見たところです。
この時代のカメラは、むきだしの原理を眺めることができるため、カメラのことを学ぶには最適でした。
絞りを絞るとはどういうことか?低速シャッターと高速シャッターの違いは何か?自動絞りとは何か?シャッターチャージとはどういうことか?フォーカルプレーンシャッターの先幕後幕とは何か?などが直感的に分かります。
デジタル一眼レフの場合は、このアングルからミラーボックスを見ることはできません。
デジタルカメラから写真をはじめた方は、中古のMF一眼レフを入手されると、モヤモヤしていたものが瞬時に理解できると思います。






ボディ底部のバッテリー室です。
このバッテリーは露出計駆動用のもので、シャッター駆動には関係しません。
Pentax SPIIは純粋な機械式シャッターなので、バッテリーがなくなってもシャッターは切れます。

バッテリーは、H-B型という1.35Vの水銀電池を使います。
しかし、水銀電池は環境問題の観点から1995年以降製造されていません。
代替電池として何を使うか?ですが、第一の選択肢は空気亜鉛電池"Wein MRB400"で決まりだと思います。
外形寸法、出力電圧がH-B型水銀電池と同一のため、何も考えずにリプレースできます。
価格もそれほど高価ではありません。

第二の選択肢は、LR41、SR41などのボタン電池を使う方法です。
これらの電池はコンビニやドラッグストアで買えるため、入手性が良いのがメリットです。
私は、SR41という酸化銀電池を使っています。
LR41も使えますが、バッテリー寿命はSR41の方が長いです。

SR41、LR41ともに、H-B型水銀電池の100%互換品ではありません。
外形寸法と出力電圧がH-B型水銀電池とは微妙に異なっています。
そのままバッテリー室に押し込むと、外寸が小さいため、落ち着きが悪いです。
そのため、私はスペーサーをはさんで使っています。
上の写真に写っている黒いゴムリングがそれです。
これの正体は水道工事用パッキングです。
ホームセンターなどでサイズが合うものを買ってくれば使えます。
専用スペーサーも市販されています。
"PENTAX H-B 水銀電池アダプタ"というものです。

スペーサーを介して、SR41/LR41を使う方法では、露出計の補正が必要となります。
H-B型水銀電池の出力電圧が1.35Vであるのに対し、SR41やLR41では1.5Vとなっているため、そのまま使うと1段ほどアンダーに露出が表示されます。
F8,1/250sec.のところをF11,1/250sec.ぐらいで表示するのです。
これを補正するには、フィルム感度設定を変えるのが手っ取り早いです。
ISO100の場合、ISO50~64に設定すると、だいたい正しい露出を示します。
そんなアバウトな露出計は嫌だ、という人には電圧変更タイプの電池アダプターもあります。
"関東カメラサービス製電池アダプターH-B"というものです。

Pentax SPIIの測光パターンは、フォーカシンググラス全体の光量をベタに計測する平均測光です。
現代的な多分割測光や中央重点測光とは値が違って出ることがあるので、慣れていないと「あれ?」と思うことがあるかもしれません。
空と大地が半分づつ入るような写真では、確実にアンダーになります。
私は、この露出計で写真を覚えたようなものですから、まったく違和感はないです。
EOS30Dでも90%の写真を中央重点平均測光で撮っているぐらいですから。
逆に、インテリジェントな評価測光が使いにくいです。^^

Pentax SPIIで撮った作例写真は下にあります。
天候的に暗い日だったのと、ISO100フィルムを使ったため、絞りは開き目で、開放からF4あたりを多用しています。

 Xylocopal's Photolog 2007/03/12 鉈薬師(医王堂)山門
  http://xylocopal2.exblog.jp/5704792/

 Xylocopal's Photolog 2007/03/13 鉈薬師(医王堂)
  http://xylocopal2.exblog.jp/5710624/
[PR]
by xylocopal2 | 2007-03-23 20:57 | Hardware
<< オールドカメラの露出計チェック 庭のソメイヨシノ >>


Copyright © 2004-2010 Xylocopal All Rights Reserved