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2007年 03月 09日 小型M42マウント一眼レフ FUJICA ST605II




"FUJINON 55mm F1.8"が寂しそうにしていたので純正ボディを買ってやりました。
FUJICA ST605II。
1978年に作られたM42マウント一眼レフです。
FUJICAというのは、富士フイルムのいにしえのカメラブランドです。
このカメラ、"FUJICA STシリーズ"の中では底辺を担うローコスト/ロースペックモデルですが、1970年代の日本製カメラらしく非常に真面目にしっかり作られており、30年近く経った現在でも実用に耐えます。3200円なり。

 FUJICA ST605II 仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  マウント: M42 (プラクチカスクリューマウント)
  シャッター: 機械式横走り布幕フォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, 1/2-1/700sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、スプリットマイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: 0.96× (at 50mm)
  ファインダー視野率: 92%
  露出計: SPDセル TTL中央重点絞り込み測光、指針表示
  測光レンジ: EV+2 - EV+17.66 at ISO100
  シンクロ接点: 1/60sec.
  バッテリー: 1.5Vボタン電池×2 (SR44, LR44 etc.)
  外形寸法: 133×86×49mm
  重量: 565g
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FUJICA ST605IIは、一眼レフとしてはかなり小さなカメラで、横幅は133mmしかありません。
135.5mmの"PENTAX MX"、136mmの"OLYMPUS OM-1"より小さいといえば、お分かりいただけるでしょうか。
コンパクトな一眼レフではありますが、トップカバー/ボトムカバーなど主要部分は金属製で、持ってみると意外にズッシリした質量を感じることができます。
このカメラが作られた1970年代後半は、カメラボディにプラスチックが使われ始めた時代で、FUJICA ST605IIは金属製カメラとしては最終世代に属するといえます。






ローコストモデルらしさが現れているシャッタースピードダイヤルです。
ST605IIの最高シャッタースピードは1/700sec.。
"Ihagee EXA 1b"の1/175sec.、"RICOH XR500"の1/500sec.に次ぐショボくささです。
ショボいといっても、1/2sec.~1/700sec.もあれば、実用的にはもう全然大丈夫なんですが。

それにしても、1/700sec.とはいかにも中途半端です。
せめて、1/750sec.にしておけば半絞りなので計算しやすいわけですが、富士フイルムというのは真面目な会社なんでしょうね。
おそらく、この正直申告はオマケ的位置づけなのでしょう。
使おうと思えば使えるよ、半絞りよりはちょっと遅いけど我慢してね、という。
実質は、1/500sec.までのカメラ+オマケ付という理解でいいのではないでしょうか。

1/700sec.というシャッタースピードは、スペックを気にする人が多い日本国内向けというよりは、実利を重視する海外向け設定のようです。
最初に1/700sec.シャッターを搭載した"FUJICA ST601"は輸出専用モデルでした。
その後、"FUJICA ST605""FUJICA ST605N"と続きますが、最高シャッタースピードは1/700sec.のままでした。
後継モデルの輸出専用機、"FUJICA ST705""FUJICA ST705W"では、きちんと半絞り分を実現し、1/1500sec.となっています。
それにしても、1/1500sec.というのも聞いたことがない中途半端なシャッタースピードです。
ライカに対抗して1/1250sec.のシャッターを付けたコンタックスより、ユーザサイドに立った中途半端さではありますが。
正直なところ、1/1500sec.は使いようがありますが、1/1250sec.となると計算が面倒なだけで意味があるシャッタースピードとは思えないです。






軍艦部は何の変哲もないプレーンなものです。
強いていえば、バッテリー室が妙な場所にあるくらいのものでしょうか。
バッテリーは、SR44×2 or LR44×2。
両者ともコンビニやドラッグストアで普通に売られているので入手性は二重丸です。

露出計は、レリーズボタン半押しでONです。
絞り込み測光のカメラでは、絞り込みレバーと連動させることが多いのですが、このカメラは開放測光での利用をメインに考えているようです。
開放測光非対応レンズの場合は、絞り込みボタンを押しながらシャッターを半押しします。
煩雑ではありますが、納得のいく操作系ではあります。
"Praktica PLC3"のように、開放測光非対応レンズを使うのが非常に面倒ということはありません。

測光素子はSPD(Silicon PhotoDiode)です。
1970年代前半まで主流だったCdS(硫化カドミウムセル)に比べると、格段に反応が速いのが特徴です。
FUJICA ST605IIは指針式露出計ですが、Pentax SPなどの指針式CdS露出計に比べると反応速度がまるで違います。
CdS式の場合、指針はモタ~ッとしか動きませんが、SPD露出計の場合は、針がピッピッと動きます。
露出計指針の動きを見れば、そのカメラの測光素子がSPDかCdSかは一発で分かります。

巻き上げレバーは、"屈曲式"になっています。
収納時に出っ張らず、運用時に使いやすいスマートな方法だと思います。
レリーズボタンはロック機能付きです。
フィルムカウンターは順算式、裏蓋開放時自動復帰。
リバースクラッチは底蓋のポッチ押し。
こうした標準インターフェースのカメラを使っていると、30年前のものなのに「現代のカメラはいいなぁ」と思います。
古いカメラを使いすぎたんでしょうか。^^






ST605IIのシャッターは古典的な横走り布幕フォーカルプレーンです。
1970年代後半、フォーカルプレーンシャッターは、横走り布幕から縦走り金属幕に徐々に置き換えられつつありました。
軽量な金属幕の方が幕速を上げられ、高速シャッターを実現するのに有利だったからと思われます。
現在では、フォーカルプレーンシャッターといえば縦走り金属幕のものばかりになってしまい、こうした布製ゴム引き幕のものはほとんど見かけなくなりました。
横走り布幕シャッターは全然駄目か?といえば、ライカMシリーズがM7まで使い続けていることを考えれば、そんなことはないと思います。
ただ、1/4000sec.などの高速が出しにくい、AEとの相性が悪い、製造コストが金属幕よりかかる、ということなのだと思います。






ST605IIのマウントは、M42です。
プラクチカマウント、Pマウント、スクリューマウントなどと呼ばれるねじ込み式のマウントです。
ただし、古典的なねじ込みマウントではなく、独自拡張を施したもので、専用のEBC FUJINONレンズを装着すれば開放測光可能となります。
"Pentax SPF""Praktica PLC3""Voigtlander VSL1 TM"などと同じく、開放測光対応拡張M42マウントと呼んだ方が正しいような気がします。






開放測光を行うためには、レンズの開放F値、現在の絞り値などをカメラ側露出計に伝える必要があります。
Pentax SPFはマウント内のツメで、Praktica PLC3はフランジ面の電気接点で、絞り情報を伝えています。
ST605IIでは、マウント外縁部のツメを介して絞り値をカメラ側に伝えるようになっています。
上の丸で囲んだ部分がそのツメです。
開放測光対応のEBC FUJINONレンズには、このツメに対応するツメがあり、ツメ同士が噛み合うことで、現在のF値などをカメラ側露出計に伝えるようになっています。






開放測光時の精度を高めるために、ST605IIのフランジ面には位置決め用のロックピンがあります。
レンズ側の対応する位置には溝が切ってあり、スクリューマウントでありながら、カチッという音とともにレンズが固定されます。
レンズを取り外す際には、横のリリースレバーを押し下げて、ロックを解除します。
このロックピンとあわせ、普通のM42マウントに比べ、ネジ溝が浅く、1回転ほど少ない回転で装着/分離ができるため、レンズの着脱はかなりスピーディな印象です。

絞り込みボタンは右手ひとさし指で押せる位置にあります。
Pentax SP/SPF/SPIIなどのように、左手で押し上げるタイプのものより好みの位置です。
Praktica MTL5のようにロックなしタイプなのも個人的には気に入っています。
この絞り込みボタンは単純に絞り押しピンを押すだけの構造で、露出計のスイッチが入ったりはしません。
開放測光非対応M42マウントレンズを装着して測光する際には、先に書いたとおり、絞り込みボタンを押しながら、シャッター半押しを行う必要があります。
絞り込みボタンを押さなくても、メーターは振れますが大幅にオーバーになりますので注意してください。

ST605IIをはじめ、FUJICA STシリーズの開放測光対応M42マウントカメラは、独自拡張マウントのため、装着できるレンズ、装着できないレンズ、装着できても実用不可のレンズがあるといわれています。
そこで、手持ちのM42マウントレンズをST605IIに付けて、実用になるかどうかを調べてみました。

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Asahi Opt. Co., Super-Takumar 50mm F1.4 Model 1, 8el.
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

Asahi Opt. Co., Super-Takumar 50mm F1.4 Model 2, 7el.
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

Asahi Opt. Co., SMC Takumar 55mm F1.8
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

YASHICA AUTO YASHINON DX 50mm F1.7
 装着/分離ともに問題なし
 3m以遠で後玉がミラーに当たる

YASHICA AUTO YASHINON DS-M 50mm F1.4
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

Carl Zeiss Jena MC electric Pancolar 50mm F1.8
 電気接点が邪魔をしてねじ込めないので、レンズロックピンリリースレバーを押しながら装着/分離
 開放以外は常時F2.8ぐらいに絞られる
 特に問題なく使える

Carl Zeiss Jena Tessar 50mm F2.8
 装着/分離ともに問題なし
 開放以外は常時F4ぐらいに絞られる
 特に問題なく使える

Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.8
 装着/分離ともに問題なし
 開放以外は常時F4ぐらいに絞られる
 特に問題なく使える

Pentacon auto 50mm F1.8
 装着/分離ともに問題なし
 開放以外は常時F2.0ぐらいに絞られる
 特に問題なく使える

Voigtländer Color-Ultron 50mm F1.8
 開放測光用独自拡張スリットが干渉する場合があるため、レンズロックリリースレバー押下にて装着/分離
 特に問題なく使える

CHINON AUTO CHINON 50mm F1.9
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

REVUE AUTO REVUENON 50mm F1.9
 装着/分離ともに問題なし
 特に問題なく使える

FUJIFILM FUJINON 55mm F1.8
 何も問題なし
 開放測光OK
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というわけで、実用不可なのは、オートヤシノンDX 50mm/F1.7の3m~無限遠だけでした。
このレンズ、後玉が異様に出っ張っており、"Voigtländer Bessaflex TM"でも3m~無限遠ではミラーと干渉します。
このレンズの無限遠が使えるカメラは、"Praktica MTL5/50""Praktica PLC3""Revueflex SD1""CHINON CS-4""Ihagee Dresden EXA 1b"などがあり、決して規格外れではないと思うのですが。

東独製レンズは、絞り押し込みピンの長さがわずかに長いらしく、開放以外は若干絞られた状態になります。
実写時には所定位置まで絞り込まれますし、開放設定であれば、ちゃんと開放になるので、問題になることは少ないと思います。
問題があるとすれば、ファインダーが少しだけ暗くなることでしょうか。

独自拡張開放測光対応レンズである、Pancolar electric 50mm/1.8とVoigtländer Color-Ultron 50mm/1.8は、案の定、少し引っかかりました。
とはいえ、レンズロックピンを押下しながら装着/分離すれば何も問題はありません。
使えるレンズに入れていいと思います。

フジフィルム製M42マウント一眼レフはレンズを選ぶ、といいますが、この程度の互換性があれば、まずまずではないでしょうか。
様々なM42レンズの母艦として、FUJICA ST605IIを選ぶのは悪くないと思います。
小さくて可愛らしいですし、何より安いですから。
by xylocopal2 | 2007-03-09 23:59 | Hardware
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