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2006年 11月 23日 最軽量M42マウント一眼レフ CHINON CS-4




数日前、米国オハイオ州からやって来たM42マウント一眼レフ、CHINON CS-4です。
後ろにある、よく似たカメラは、Revueflex SD1。
Xylocopal's Photolog 2006/10/13 小型軽量M42母艦 Revueflex SD1で紹介したとおり、この両者は兄弟です。
1980年~1982年、長野県茅野市の光学メーカー、チノンによって作られました。
CHINON CS-4がメーカーオリジナル、Revueflex SD1がドイツ版通販生活"Quelle"のために生産されたOEMバージョンです。
この両者、外装仕上が若干異なるだけで、まったく同じカメラです。

まったく同じカメラを買って何が面白いのか?とは聞かないでください。
ただ、欲しかったからとしか答えようがありません。^^
メーカーオリジナルとそのOEM版を買うのは、中古カメラウィルス感染症状としては、ごくごく軽い部類に入ります。
もっと重篤な場合は、シリアルナンバーしか違わない同一カメラを3台も4台も集めたりします。
私の症状なんて、まだまだ可愛らしいものなのです。

CHINON CS-4の仕様は、Revueflex SD1と同一です。
1980年代の技術で作られたM42スクリューマウントMF一眼レフ。
AEなし、中央重点絞込測光3LED露出計、フルマニュアル機械式シャッター。
主要諸元は下記のとおりです。

 CHINON CS-4 仕様一覧
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  フォーマット: 135判 24×36mm
  レンズマウント: M42 (プラクチカスクリューマウント)
  シャッター: SEIKO MFC 純機械式縦走りメタルフォーカルプレーン
  シャッタースピード: B, 1-1/1000sec.
  ファインダー: ペンタプリズム式アイレベル固定、スプリットマイクロプリズムフォーカシングスクリーン
  ファインダー倍率: 0.87× (at 50mm)
  ファインダー視野率: 92%
  露出計: SPDセル TTL中央重点絞込測光、3LED表示
  測光レンジ: EV+2(F1.9, 1sec.) - EV+18(F16, 1/1000 sec.) at ISO100
  シンクロ接点: 1/60sec.
  露出計バッテリー: 1.5Vボタン電池×2 (LR44、AG13、SR44, S76 etc.)
  外形寸法: 135×86×50.5mm
  重量: 455g
  販促用カタログ(英文)PDFファイル
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これらのスペックは、1980年代初頭のMF一眼レフとしては平均的なものです。
突出して優れた点はなく、どちらかといえば凡庸といっていいスペックです。
455gの重量も、同時代のPentax ME Super (450g)NIKON EM (460g)に比べて特に軽いというわけではありません。
しかし、重厚長大なものが多いM42マウント一眼レフの中で比べてみると、まったく話が違います。
CHINON CS-4は、M42マウント一眼レフとしては、格段に小型軽量の部類になるのです。
下記に、代表的なM42マウント一眼レフの重量を並べてみました。

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  CHINON CS-4 / Revueflex SD1: 455g
  Asahi Pentax SP: 620g
  Asahi Pentax SPF: 655g
  FUJICA ST-801: 635g
  FUJICA ST-605: 565g
  Pentacon Praktica PLC3: 590g
  Pentacon Praktica MTL5: 580g
  Pentacon Praktica MTL50: 565g
  Voigtländer Bessaflex TM Silver: 520g
  Voigtländer Bessaflex TM Black: 485g
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CHINON CS-4は、Pentax SPF、FUJICA ST-801あたりに比べると、200gほども軽いことが分かります。
純正標準レンズ、AUTO CHINON 50mm F1.9は150gしかありませんから、レンズ付重量は605g。
Pentax SP/SPF、FUJICA ST-801あたりのボディより軽いことになります。
たかだか200gの違いしかありませんが、この違いはかなり決定的です。
軽量コンパクトゆえに気軽に持ち出せ、手持ちのM42マウント一眼レフの中では、CHINON CS-4とRevueflex SD1の出動回数が最も多くなっています。





それにしても、チノンは何故1980年にもなって、M42マウントのカメラを作ったのでしょうか。
バヨネットマウント化が遅かった旭光学(PENTAX)が重い腰を上げて、Kマウントに移行したのが1975年です。
それから5年経った1980年頃は、「今さらM42スクリューマウントなんて、今どき絞込測光なんて」という時代になっていました。
かくいうチノン自身もKマウントに移行完了していました。

CHINON CS-4が生まれた理由は、国内マーケットと海外マーケットのニーズの違いにあったと思われます。
チノンの主要マーケットは海外でした。
日本国内とは異なり、アメリカやヨーロッパでは1980年代になってもM42マウントカメラの需要がけっこう多かったようです。
海外マーケットにおける要望が強かったために、チノンは一度は生産終了したM42マウント一眼レフを再生産することになったのだと思われます。

再生産の際、ベースにしたのが同社のKマウント一眼レフ、CHINON CM-4でした。
リンク先の写真を見れば分かるとおり、両者は極めてよく似ています。
絞込測光スイッチの有無、レンズ着脱レバーの有無ぐらいしか、外観的相違点は見あたりません。
KマウントボディにM42マウントカメラの機能を詰め込むのは大変な苦労であったらしく、CS-4設計者の方のコメントにその思い出が記されています。
これを読むと、地味なカメラであっても、開発担当の技術屋さんは一生懸命頑張ってこられたんだなぁと思います。
1980年代は、「ものつくりニッポン」がまだまだ元気な時代でした。

CHINON CM-4のフレームを流用した結果、CHINON CS-4は世界最小のM42マウント一眼レフとなりました。
同時に、絞込測光の方法はよりシンプルになりました。
CHINON CEII MemotronCHINON CM-1CHINON CM-3などの同社製M42マウント一眼レフで採用された瞬間絞込測光機構は採用されず、Pentax SP/SPII、Bessaflex TMなどと同様なレンズマウント左側のスライド式スイッチによる絞込測光方式となったのです。
レリーズストロークの長い瞬間絞込測光が採用されなかったおかげで、マニュアル露出は逆に使いやすくなったような気がします。

開口部の大きなKマウントボディをベースにしたことで、CHINON CS-4は、M42マウント一眼レフとしては比較的大きなミラーを持つことになりました。
当時のチノンは、「コンタックスに次ぐ世界第2位の大きなミラー」を謳っています。
加えて、CHINON CS-4のミラーはスウィングバック機構付です。
後退しながら跳ね上がるミラーですね。
そのため、比較的大きなミラーにもかかわらず、後玉が出っ張っているレンズを装着しても、ミラーに後玉が当たるということがありません。
手持ちのレンズの中、最も大きな後玉張り出しを持つAUTO YASHINON DX 50mm F1.7を付けても、ミラーと干渉しません。
このレンズ、Bessaflex TM Silverに取り付けると、見事にミラーが後玉にぶつかります。
CHINON CS-4は、様々なM42マウントレンズを装着する母艦としては、理想的なミラーボックスを持っていることになります。





CHINON CS-4のトップカバー、ボトムカバーはプラスチックです。
しかも、いかにもプラスチックでございます、ボロいんです、ヤグくてスンマセン、というような安っぽい仕上げです。
これぐらい割り切ったカメラの方が、潔い印象を受け、好感が持てます。
Pentacon Praktica Lシリーズのような、どうみても金属にしか見えない精緻なメッキが施されたトップカバーは、技術的には素晴らしいのでしょうが、どうも貧乏くさくて悲しくなります。
プラスチックの素材は、昨今のデジタル一眼レフのようなエンジニアリングプラスチックではなく、一般的なABS樹脂と思われますから、強度的にはそれほど丈夫ではありません。
キズは付きやすいですし、ヒビも入りやすいです。

露出計はチノン伝統のアイピース脇の3点LED表示です。
この露出計はいちいちファインダーを覗かなくても、露出が分かるので、ありがたいです。
標準反射率に近い被写体を探して地明かりの光量を測るという、入射光式露出計に近い使い方をするユーザにとっては、こうした露出計の方が使いやすいと思います。
絞込測光カメラの場合、むしろこうした外部表示可能な露出計の方がテンポ良く撮影できるのではないかと思います。

1982年のカメラ年鑑によると、CHINON CS-4の発売時価格は31800円となっています。
円ベースの定価があることから分かるように、一応、日本国内でも販売されたようです。
しかしながら、国内販売数はそれほど多くなかっただろうと思います。
プラボディのM42スクリューマウント絞込測光フルマニュアル式ロースペックカメラが、1980年代初頭の日本で大量に売れるとは思えませんから。
低価格ロースペックモデルが売れる海外とは異なり、日本国内では高価格ハイスペックのカメラの方が売れるのです。
高ければ高いほど売れるらしいのです。
カメラに求めるものが、諸外国と日本国内では、決定的に異なっているように思われてなりません。

CHINON CS-4は、Bessaflex TMを例外とすれば、最後のM42マウント一眼レフです。
凡庸なスペックではありますが、発売後26年を経た現在から見ると、その凡庸さゆえに使いやすいM42マウント一眼レフになっています。
シンプルな機械というものは、時代が変わっても使いやすいものです。
開放測光ですらないため、逆に様々なM42マウントレンズを装着する際の融通性が高く、発売後四半世紀を経た現代においては、より楽しめるカメラとなっています。

CHINON CS-4は発売時期が遅かったために、注目されることは少ないですが、隠れた実力機だと思います。
21世紀に作られたM42マウント一眼レフ、Bessaflex TMと比べても、写真を撮る上では何も遜色がありません。
こういう渋いカメラは好きですね~。
状態の良いボディを見つけたら、もう2~3台買うかもしれません。^^

Xylocopal's Photolog 2006/10/13 小型軽量M42母艦 Revueflex SD1で取り上げた、Revueflex SD1のコンディションは、まぁ、"Mint"と呼んでもいいぐらい状態が良いものでした。
日本の中古市場でいえば、「良品」~「美品」クラスでしょうね。
パーツの欠損はもちろんなく、ほとんど無傷で、動作は何も問題がないというレベルです。

今回届いた、CHINON CS-4は、それに比べると、だいぶくたびれています。
Excellent- or Very Good+ぐらいでしょうか。
日本の中古相場でいうと、「実用品」、「並品」、「AB」といったところです。
部品の欠損はありませんが、無数のキズがあり、ボトムプレートにはヒビもはいっています。
巻き上げレバーの操作感も渋くなり、若干ガタがあります。

モルトの状態もずいぶん違います。
モルトというのは、遮光用、衝撃吸収用のスポンジで、モルトプレーンの略称です。
裏蓋部分の遮光、ミラーとフォーカシングスクリーンの間のダンパー、ペンタプリズムの固定用などに使われました。
モルトは、1960年代~1980年代のカメラで多用されましたが、経年劣化により加水分解をおこす欠陥があります。
製造後20年も経つと、ボロボロに分解し、ベタベタに溶けていることが多いです。

左は、CHINON CS-4のモルトです。
完全に溶けてしまい、原形を留めずボロボロになっています。
一方、Revueflex SD1の方は、未だにしっかりとしています。
保管場所が良かったのかもしれませんし、あるいは、すでにモルトを張り替えられた個体なのかもしれません。

モルトは必要悪ではありません。
1930年代~1950年代のカメラにはモルトは使われていませんが、特に光線カブリしやすいというようなことはありません。
形状の研究や工作精度の向上により、モルトを使わなくても遮光性は保たれるようです。
おそらく、利便性、コストダウンのためにモルトは使われたのだと思います。
高度経済成長時代のツケが現代に回ってきているわけですね。

今のところ、CHINON CS-4のモルトは溶けているとはいえ、遮光性は保たれているようです。
しかし、裏蓋を開けるたびに、ボロボロになったモルトがフィルム室に散らばるので厄介です。
デジタル一眼レフのイメージセンサーのゴミと同じで、フィルム面につけば写り込みます。
いちいちブロアで吹き飛ばしていますが、面倒くさいので、そのうち、モルトを張り替えてやろうと思っています。
幸い、Yahoo!オークションなどで、交換用モルトが売られており、交換作業もそれほど面倒ではありません。

このCHINON CS-4には、標準レンズとして、Auto Chinon 50mm F1.9が付いてきました。
Xylocopal's Photolog 2006/11/06 秋の色で、なかなか良いではないかと誉めた、Auto Revuenon 50mm F1.9と同一のものです。
カメラ本体のコンディションとは裏腹に、レンズの状態はなかなかいいです。
カビもクモリもキズもなく、コーティングも非常にしっかりしており、新品といっても通用しそうな外観です。

試写した印象は、もちろん、Auto Revuenon 50mm F1.9と同じ。
突出した素晴らしさはないけれど、実直にして端正な描写です。
いわゆる、いぶし銀という奴でしょうか。
ツボにはまりましたね~。
私は、これらのレンズ、Auto Revuenon 50mm F1.9、Auto Chinon 50mm F1.9を断然愛するものであります。
以下実写例です。




CHINON CS-4 / Auto Chinon 50mm F1.9
Konica Minolta Centuria Super 100, EPSON GT-X750






CHINON CS-4 / Auto Chinon 50mm F1.9
Konica Minolta Centuria Super 100, EPSON GT-X750






Canon EOS 30D / Auto Chinon 50mm F1.9


CHINON CS-4、Revueflex SD1は、小型軽量で扱いやすい一眼レフです。
製造年式、ミラーのレンズ後玉干渉の少なさを考えると、最良のM42マウント一眼レフに思えます。
しかし、現在の入手性はあまりよくありません。
もともと主力商品ではなくニッチ商品であったためか、あまり生産数が多くはなかったように見受けられます。
国内市場ではまず見かけませんし、国際的オークションサイトのebayですら、二ヶ月に1台ぐらいしか現れません。
このカメラが欲しいと思った方は、毎日、ebayをチェックするのが一番早いように思います。
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by xylocopal2 | 2006-11-23 20:15 | Hardware
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