Copyright © 2004-2010 Xylocopal All Rights Reserved
Top
2006年 08月 31日 放射能レンズ? Kodak US.Ektar 50mm F3.5



Canon EOS 30D / Sigma Macro 50mm F2.8 EX DG
ISO100, Av -1.3EV, F8.0, 1/3sec., WB:Manual


昨日のエントリ、"Xylocopal's Photolog 2006/08/31 レチナとお散歩"を撮った、コダック・レチナ I Type 010です。
蓋が付いていることから分かるとおり、蛇腹式のレンズを畳んで格納することができます。
格納時のサイズは非常に小さく、ロングサイズのタバコ箱程度。
初めて見る人は、一様にその小ささに驚きます。

それにしても汚いカメラです。
巻き戻しノブのアルミニウムは中途半端に腐食が進み、大昔の弁当箱のような色艶です。
戦前のレチナ、Type 117あたりの、黒エナメルペイントに真鍮ニッケルメッキの優雅なたたずまいはまったくありません。
このカメラは、第二次世界大戦が終わって、わずか2年後の1947年に、西ドイツ・シュツットガルトで作られました。
この時代のレチナは、敗戦により物資が不足していたため、戦前や1950年代のレチナに比べて、非常に質素な作りとなっています。

しかし、このレチナ、羊の皮をかぶった狼です。
直列6気筒24バルブDOHC 2000cc S20型エンジンを搭載したハコスカGT-Rのような、といえば、分かる人もいるかもしれません。
私が持っているレチナの中では最もボロい外観ながら、実は最もよく写るカメラなのです。

何が違うか?といえば、レンズが違います。
普通の距離計なしレチナには、シュナイダー・クロイツナッハ・クセナーというレンズが付いていますが、このカメラには米国製エクターが付いています。
自動車はエンジン、カメラはレンズです。
レンズさえ優秀であれば、外観はボロ雑巾でも写真はしっかり写ります。
クセナーも非常に素晴らしいレンズですが、エクターはその上を行きます。
その描写は、「別格」というしかありません。






この冴えない外観のボロいレンズがUSエクターです。
Kodak Ektar 50mm F3.5, Made in U.S.A.
Made in U.S.A.という文字が刻まれているエクターを通称"US Ektar"と呼びます。
わざわざ、"US"を付けるのは、シュナイダーOEMによるエクターがあるためです。
OEMエクターは、中身はクセナーですから、写りもクセナーです。

クセナーは、テッサークローンの三群四枚レンズですが、USエクターはエレメント構成が若干違うといわれています。
テッサーが三群目が貼り合わせになっているのに対し、USエクターは1群目が貼り合わせになっているといわれています。
真偽のほどは分かりませんが、四枚玉の中では出色の写りであることは間違いありません。
私のインプレッションでは、Carl Zeiss Tessar を超える四枚玉は、Agfa Solinar と、US Ektarしかありません。

Kodakのフルネームは、Eastman Kodakです。
頭文字はEK。
コダックのことをEKと呼ぶ業界は多いようです。
私がいた映画制作会社では、コダックのフィルムは「イーケー」と呼ばれていました。
フィルムの種類をさすときには、「イーケーの5247持ってこい」などと呼ばれていました。

"Ektar"というレンズ名は、イーストマン・コダックの頭文字、"EK"からとったものです。
コダックでは、自社製最高級レンズに、EKの文字を入れた"Ektar"の名前を与えてきました。
レンズ構成枚数などには関係なく、自信を持って送り出せるレンズにのみ、エクターの名前を与えてきたのです。
それらは、コダック発祥の地、ニューヨーク州ロチェスター工場で作られたものでした。
後年、OEM生産によるEktanar、Ektanonなどといったレンズが作られた際にも、Ektarだけはロチェスター工場産だったといわれています。

エクターには、135mm/F3.5、100mm/F3.5、80mm/F2.8、47mm/F2.0、50mm/F3.5など、様々なものが存在しますが、いずれも伝説の銘玉といわれています。
これらエクターの素晴らしさの秘密は、硝材、つまり原料ガラスにあったといわれます。
エクターの硝材で特筆すべきはトリウムです。
特に航空撮影用のエアロエクターはトリウムレンズとして知られています。

トリウムとは、原子番号90の放射性物質です。
かのキュリー夫人が研究したことで知られる、古くから認知されていた放射性物質です。
光学ガラスにトリウムを混ぜると、屈折率が上がり、より高性能なレンズが作れます。
コダックはかなり早い時期から、トリウムレンズの研究をしていたといわれています。

トリウムレンズには、昔からよく写るといわれる銘玉が多いです。
こうしたレンズにガイガーカウンターを近づけると、バリバリと大きな音を出すそうです。
トリウムは原子力発電所の燃料として使うことも可能といわれるほどの物質ですから、相当量の放射線を出すわけです。
写真用レンズに使われた酸化トリウムが出す放射線は、フィルムを感光させるほどのパワーはない微弱な量といわれますし、私のような使用頻度では全く無問題と思われますが、なかなかに不気味です。
鉛フリーレンズが主流となった現代においては考えられないようなヤバい話ではあります。^^


追記
----------
簡易型放射線測定器を借用することができたので、手持ちのレンズの放射線量を測定してみました。
その結果、US.Ektar 50mm F3.5は放射線を出していませんでした。
濡れ衣だったわけです。
しかし、旭光学製Super-Takumar 50mm F1.4など、かなり高い放射線を出しているレンズがいくつかありました。
Xylocopal's Photolog 2006/10/26 放射能レンズ ガンマ線量実測に測定結果をまとめてありますので、興味のある方は参照してください。





Kodak Retina I Type 010 / Kodak US.Ektar 50mm F3.5
Konica Minolta Centuria Super 100, Scanned with EPSON GT-X750






Kodak Retina I Type 010 / Kodak US.Ektar 50mm F3.5
Fujifilm Superia 100, Scanned with EPSON GT-X750






Kodak Retina I Type 010 / Kodak US.Ektar 50mm F3.5
Fujifilm Superia 100, Scanned with EPSON GT-X750






Kodak Retina I Type 010 / Kodak US.Ektar 50mm F3.5
Fujifilm Superia 100, Scanned with EPSON GT-X750

[PR]
by xylocopal2 | 2006-08-31 23:32 | Hardware
<< 覚王山スターアイズにて レチナとお散歩 >>


Copyright © 2004-2010 Xylocopal All Rights Reserved