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2006年 04月 26日 ジャンクな銀塩MF一眼レフ RICOH XR500 前編



Canon EOS 30D / TAMRON SP AF28-75mm F2.8 XR Di
ISO100, -1.0EV, F5.6, 1/4sec., WB:Manual


Xylocopal's Photolog 2006/04/24 "軒下"を撮ったカメラです。
RICOH XR500という銀塩MF一眼レフで、1978年、私が大学3年生のときに発売されました。
発売時の定価は39800円。当時としても破格の安カメラでした。
その頃、大卒初任給は12万円ぐらいでした。

XR500の愛称は「サンキュッパ」、もちろん、その価格から名付けられています。
同時代の高級機Canon A-1が114000円、普及機Canon AE-1が81000円、廉価版のAV-1ですら57000円だったことを考えると、べらぼうに安価であったことが分かります。
敗戦後の日本に写真ブームをもたらした二眼レフ、リコーフレックスの時代から、リコーという会社は庶民の財布にやさしいカメラを作り続けてきたのです。

いくら安くても製品が良くなければ売れないわけですが、リコーフレックスもXR500もよく売れました。
リコーというメーカーは、持っていることが自慢になるようなカメラではなく、安価で実用的な製品を作らせると、昔から非常に上手いのです。
こうしたリコーの「早い、安い、美味い」営業戦略には大いにシンパシーを感じます。
GR Digitalこそ持っていませんが、私が初めて買ったデジカメはRICOH DC-2Lでした。

RICOH XR500は、非常にシンプルなカメラです。
以前持っていたCanon A-1は同一発売年の一眼レフですが、XR500の対極に位置するカメラでした。
Canon A-1の愛称は「カメラロボット」。
デジタル制御電子シャッターを持ち、ファインダーを覗くと7セグメントの赤いLEDが絞り値、シャッター速度を表示しました。
絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、プログラムAEと何でもありの機能満載カメラでした。

そのかわり、バッテリーがなくなると、いかなる速度のシャッターも下りないという欠点がありました。
A-1のシャッターは電磁石を利用しており、緊急時用のメカニカルシャッターさえ付いていなかったのです。
バッテリーがなくなると、漬物石代わりにしかならないカメラの先駆的存在でした。

一方、RICOH XR500はフルマニュアル、メカニカルシャッターのカメラです。
露出計は付いていますが、AE機能はありません。
押すだけでは写らないカメラです。
バッテリー室はありますが、あくまでも露出計のためのもので、シャッター自体は電源を必要としません。
体感露出/単体露出計を使うのであれば、バッテリーなしで運用できます。




Canon EOS 30D / TAMRON SP AF28-75mm F2.8 XR Di
ISO100, -1.3EV, F5.6, 1/4sec., WB:Manual


シャッター速度は、1/500sec.、1/250sec.、1/125sec.、1/60sec.、1/30sec.、1/15sec.、1/8sec.、バルブと8種類。
1/1000sec.もなければ、1/4sec.、1/2sec.もない割り切った仕様でした。
シャッター速度に関しては、1930年代の高級機以下、1950年代の普及機なみです。
1970年代後半、このカメラが発売された時代には、最高シャッター速度1/1000sec.の一眼レフは当たり前で、1/2000sec.を持つものも珍しくありませんでした。

XR500というモデル名は、最高シャッタースピードから取られたようです。
後に、1/1000sec.を持つモデルが、XR1000Sという名前で発売されています。
どうやら、商品企画の時点から、確信犯的に1/500sec.までの安カメラとして計画されたようです。

1/500sec.のシャッターユニットはそんなに安上がりなのか?というと、部品代としては全く変わらないようです。
むしろ、新規に1/500sec.のシャッターを作る方が高くなりそうです。
XR500に搭載されたシャッターは、物理的には1/1000sec.を出すことができるようです。
シャッターダイヤルにストッパーを設け、1/500sec.以上へは回らないようにされているのだとか。
上位機種との差別化のため、故意に1/1000secを仕様から外したといわれています。

1/1000sec.がないと困るかといえば、私の場合はいっこうに困りません。
銀塩カメラでは凝った撮影などせず、フィルムもモノクロかカラーネガしか使わないので。
私の常用フィルムはISO100のものばかりですし、大きくボケを活かした撮り方など、銀塩カメラではしないので、1/500sec.まであれば必要充分です。
正直なところ、私の使い方だと、1/250sec.、1/125sec.、1/60sec.、1/30sec.、この四つで95%の被写体を撮っているといっていいです。

逆に、高速シャッターがない分、長持ちしていいじゃないかとさえ思います。^^
古いカメラの場合、高速シャッターってのは、なかなかの機械的鬼門です。
Kodak Retina II Type 011に付いている、Compur Rapidシャッターの場合など、1/500sec.すら恐ろしくて滅多に使いません。
Compur Rapidは、1/500sec.だけ別バネになっており、チャージをするのにも力が要るし、ひとたびレリーズすると、バッチ~ン!という猛烈な大音響を発し、いかにも壊れそうで怖いのです。^^


RICOH XR500の標準レンズは、XR RIKENON 50mm F2です。
Kマウントですから、Pentaxのカメラで使えます。
*istDシリーズのデジタル一眼レフで使うこともできます。

このレンズも破格の安さで、発売時の定価は9000円でした。
現代のKing of 安レンズ、Canon EF50mm F1.8 IIよりさらに安かったのです。
そうした安レンズにもかかわらず、状態の良いXR RIKENON 50mm F2は、現代においても発売当時の定価を上回る価格で取引されることもしばしばであると聞きます。

そんなに人気があるレンズなのか?
はい、そうなんです。
実は人気があるのです。

このレンズ、伝説の銘玉とされ、神クラス認定を受けています。
少々眉唾物ですが、Leica Summicron 50mm f2.0Topcon RE Auto-Topcor 58mm F1.4Schneider Kreuznach Xenon 50mm F1.9Voigtlander Ultron 50mm f2あたりと並ぶ名レンズとされているらしいのです。

ネット上の評判もすこぶるよく、カスだ、ゴミだ、凡庸だなどの評価はひとつもなく、誰もが褒めています。
手元にある「実用中古標準レンズ100本ガイド」という5~6年前の本にも、お勧め度、楽しさ度の両方が五つ星レンズとして紹介されています。
お勧め度、楽しさ度、ともに五つ星というのは、100本のうち、5~6本しかありません。
その5~6本というのが、上にズラズラ書いたズミクロンやウルトロンなのです。

このレンズ、大昔のアサヒカメラ誌上では、ズミクロンに迫る高解像度と書かれたことがある、という伝説があります。
ライカ・ズミクロンといえば、これはもう銘玉間違いなしのレンズで、絞り開放から恐ろしくシャープ、しかもボケは柔らかいという、まさに神レンズです。
誰が記事を書いたのか?ズミクロンにどれぐらい迫ったのか?一歩なのか十歩なのか?が謎ですが、XR RIKENON 50mm F2が単なる安レンズでないことはたしかなようです。


伝説を調べていくと、このレンズ、製造年代によって何種類かに分かれることが分かりました。
大雑把にいうと二種類。前期と後期です。
後期モデルは前期に比べて造りが甘い、相変わらず良い描写ではあるが、神がかり度が前期モデルに劣るとのこと。

両者の識別ポイントは下記のとおりです。
前期モデルは金属鏡胴、最短撮影距離は0.45m。
後期モデルはプラスチック鏡胴、最短撮影距離は0.6m。

私が、オークションで小汚いXR500に入札したのは、ひとえに、0.45という文字が写真にあったからです。
お、これは伝説の前期モデルじゃないか。
カメラボディ、50mm F2、75-150mmの三点セットか。
どれどれ、ポチッとな‥‥。

カメラ、レンズともに大量に売られたため、まったくレアモデルではありません。
いつ、オークションを覗いても出品されていますし、中古カメラ店ならどこにでもあるありふれたカメラ&レンズです。
ただ、どうせ、落とすなら前期モデルがいいな、と思っただけです。
とりあえず、5000円ほど入れておきました。
伊達や酔狂とは、こういうことを言います。^^

オークションの説明には、レンズは前期モデルである、とはどこにも書いてありません。
完動品である、とも書かれていません。
それどころか、「カビ、ゴミ、ホコリ多し」、「オーバーホール、部品取り目的にどうぞ」、「ノークレーム・ノーリターン」などと書かれています。
開始価格は500円。
部品の欠落がなく、「シャッター落ちます」と書いてあるだけが取り柄のアイテムでした。

このオークション、説明文があまりにも的確なため、入札は多くありませんでした。
たいした競り合いもなく、結局3500円でゲットしました。
良かったというのか、阿呆というのか‥‥、
何しろ、中古カメラを買う人は、脳が「中古カメラウィルス」に冒されていますから。^^


ブツが届きました。
カメラ、レンズとも、思ったより綺麗です。
勝ったか?
いや、まだまだです。^^
そんなに甘くねーよ。

何はともあれ、50mmレンズをチェックします。
前玉、後玉ともに綺麗です。キズはありません。
前玉はほとんど無色のコーティング。
コーティングなしなのか?と思うほどです。
もちろん、時代的にありえないし、大体透明度が高すぎます。
ノンコートレンズというものは、見た目は白っぽくて、かなり透明度が悪そうなシロモノです。
後玉は普通の青紫色のコーティング。
両者ともコーティングムラ、ハゲなし。

こいつにカビが生えていたら嫌だな~、と思いながら中を覗いてみると、かなり綺麗です。
カビは生えていないし、くもりもほとんどありません。
もちろん、鏡胴外観は綺麗で、目立つキズもありません。
ヘリコイドの重さもちょうどいいぐらいです。
中でエレメントが歪んだり落ちたりしていないかぎり、まぁ、勝ったといっていいんじゃないでしょうか。^^
ここまで綺麗なレンズで、撮ってみたらorzだった、というものは今まで当たったことはありません。


一緒に付いてきた望遠ズームレンズです。
SMC Pentax-M 75-150mm F4。
懐かしの直進ズーム。
現代のものに比べると、はるかに小振りです。
フィルター径は49mm。
ズーム比2倍というのが泣かせます。^^

これも外観はかなり綺麗です。
ヘリコイドも適度な重さで、ズーミングも大丈夫です。
3500円一本勝負、二連勝か?と思いながら、中を覗いてみました。


やややっ?なんじゃ、こりゃ~!
中玉にびっしりとカビが生えています。
なんという見事な!
教科書に載せてもいいぐらい。
まさしくカビの見本です。
思わず写真に撮りました。^^

カビも中央を外れた部分に少しだけある、というのなら、それほど描写に影響を与えませんが、さすがにこれはマズイです。ペケです。
おそらく、コントラストがガッツリ落ちて、ネムネムの絵になるでしょう。
ヒストグラムの左側が広範囲にわたって無データという画像になるのは間違いないです。
レンズ本来の切れ味もなくなりますから、シャープネスにも影響があるでしょうね。

こういうのを見ると、やっぱ防湿庫がいるかな~、と思います。
でも、ドイツやチェコから送られてきた60~70年前のカメラやレンズでは、こんな盛大なカビは見たことがありません。
せいぜいが年式相応のくもり程度です。
そもそも、北ヨーロッパは冷涼な気候のため、レンズにカビが生えないらしいです。
高温多湿の日本では、毎日使っていないと、どうしてもカビが生えやすくなるようです。

いや~、それにしてもすげぇな。これ。
もう笑うしかないです。^^
ここまでカビだらけのレンズは使ったことがないので、一度試写してみようと思っています。
このレンズを付けると、カメラのミラーボックスにまでカビが生えそうで嫌なんですけどね。^^


これで一勝一敗になりました。
気を取り直して、カメラをチェックします。
外観はまぁまぁ綺麗ですが、ミラーボックスは相当汚れていました。
水害にでもあったのか?と思えるほど、土埃が入っていました。
その上、モルトプレーン(遮光用スポンジ)が経年劣化のため、ボロボロに崩れて、ゴミになっていました。
左の写真は、一応清掃後のものです。

ミラーには大きなキズがあります。
まぁ、これは写真に影響はないので、このままでいいのですが、こういうキズが付くような扱いを受けたカメラというのは、あまり状態がいいカメラではないですね。

フォーカシングスクリーン右側に、追針式露出計の指標が見えます。
丸い輪の付いた棒です。
シャッタースピードダイヤルをガッチャガッチャ回すと、この指標が上に行ったり下に行ったりします。
露出計の電源が入ると、明るさに応じて振れる指針が現れます。
指針は絞りを動かすと上に行ったり下に行ったりします。
指針を指標に合わせると、適正露出になるという原始的な露出計です。

バッテリー(LR-44×2)を新しいものに換えて、露出計をチェックしてみました。
巻き上げレバーを外に開くと、露出計がONになります。

なるはずでした。
しかし、指針はピクリとも動きません。^^

あ~、逝ってしまってるかな~?と思いながら、バッテリー室の接点をサンドペーパーで磨いてやりました。
何とか指針が振れるようになりましたが、かなりアンダーです。
露出計のいうとおりに合わせると、二段ぐらいアンダーになります。
晴天昼間順光で、ISO100、1/250sec.、F16という値を示します。

おのれの好きなアンダーじゃないか、と言うなかれ。
銀塩はデジタルと違って、アンダーは弱いですから、これは少々マズイです。
とはいえ、古いカメラの露出計NGは想定内ですから、気を取り直して、次に進みます。


XR500のシャッターは、しゃらくさいことに、この時代としては先進的な縦走り金属幕フォーカルプレーンです。
とりあえず、後幕はまぁまぁ綺麗です。
1990年代前半の銀塩EOSのように、シリコンダンパーが溶けてシャッター幕がグチャグチャということはありません。

巻き上げレバーをぐいっと巻き上げ、シャッターをチャージします。
すると、先幕が見えてきます。

やややっ?なんじゃ、こりゃ~?!
錆びているのでしょうか、赤黒い汚れがびっしり。
左下の写真はひととおり掃除したあとのものです。
これ以上は綺麗になりませんでした。

こりゃあ、一勝二敗か?と思いながら、レリーズボタンを押すと、シャッターは問題なく切れます。
オークションの説明に嘘はないですね。
たしかにシャッターは下りる。

シャッター音はなかなか豪快です。
オノマトペで表現すると、典型的な「グワシャッ!バシャッ!」という音です。
チープなシャッター速度設定の割には、音だけは本格派です。
シャッター音フェチの方にとっては、さぞかし良い音であるに違いありません。^^

いやいや、良い音だ。
EOS30Dなんか、シャッター切ると「ニッ!」と啼くんですよ。
猫がカメラの中にいるようです。
にっ!にっ!にんにきにきにき。
それに比べれば、XR500ははるかにカメラらしい、効果音ライブラリに使えそうなほど立派なシャッター音です。

何はともあれ、シャッターは動くようです。
スピードがまともかどうかは、現像するまで分かりませんが。

テスト用フィルム(なぜか、こういうものがあります。かぶらせてもいいフィルムです)を詰めて、フィルム給装のチェックをしてみます。
この時代の国産カメラでフィルム給装に問題があるものはほとんど見かけませんが、一応念のため。
問題なく巻き上げできます。軽いトルク感です。
巻き戻しも異常なし。

ただし、ときどきカウンターがリセットされません。
裏蓋を開けると自動復帰するはずなんですが、ゼロに戻りません。
新しいフィルムを入れても、いきなり36枚目と表示されたりします。
頻度は多いです。
2回に1回はカウンターリセットされません。
みゅ~。

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Xylocopal's Photolog : ジャンクな銀塩MF一眼レフ RICOH XR500 後編に続く
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by xylocopal2 | 2006-04-26 18:32 | Hardware
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