相変わらず、ネガフィルムスキャンに関するエントリへのアクセスが多いです。 2008年4月7日に、"ネガフィルムスキャン入門 改訂版"をUPしたのですが、その後もアクセスが増え続け、今ではこのPhotologの中では最もアクセス数の多いエントリとなっています。 下に直近3ヶ月のアクセス解析抜粋を載せてみました。 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ というのが該当URLなのですが、ドキュメントルートを除けばダントツのアクセス数です。 私のブログを訪れてくれる人の中、20人に1人が"ネガフィルムスキャン入門 改訂版"にアクセスしていることになります。 これだけアクセス数があるということは、カラーネガスキャンを楽しみたい、しかし、なかなか上手くトーン再現ができない、と悩んでいる人が大勢いることを物語っているように思います。 銀塩写真を取り巻く状況が崩壊寸前である一方で、なおかつ銀塩写真を楽しみたい、という方が多いのでしょうね。 そろそろ改訂版を出さないとまずそうなので、今回は全面改訂版として書き直すことにしました。 とはいえ、文言の重複などはありますから、どうか御容赦ください。 基本的な考え方/方法は前回と同じです。 ラチチュードの広いネガフィルムの良さを活かすため、できるだけ白飛び黒潰れの少ない多階調のスキャン画像の作成を目指しています。 ポジフィルムのことは考慮していませんから文句を付けないように。 また、価格の安いフラットベッドスキャナを前提に解説しています。 フィルム専用スキャナの作法は違うぞ、というようなクレームを付けないように。 まずは、以前のテキストを読んで全体の流れを把握してください。 Xylocopal's Photolog : ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #1 http://xylocopal.exblog.jp/2950773/ Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #2 http://xylocopal.exblog.jp/2961591/ Xylocopal's Weblog : ネガフィルムスキャン入門 #3 http://xylocopal.exblog.jp/2972669/ 使用したスキャナは、前回と同じく、EPSON GT-X750。 主走査4800dpiのフラットベッドスキャナです。 2001年発売のフィルム専用スキャナ"Nikon COOLSCAN IV ED"とほぼタメを張る実力を持っています。 [参考エントリ] PC環境は、Window XP SP3 + Nanao FlexScan L565。 使用ソフトウェアは、EPSON SCAN Ver.3.24J、Adobe Photoshop CS3 Ver.10.0.1。 バージョンにより、微妙にスクリーンショットの様子が違うと思いますが、まぁ大差はありません。 今回は、Photoshop頼りの部分をできるだけ少なくし、EPSON SCANのみで、ある程度のトーンまで追い込めるよう、配慮したつもりです。 EPSON SCANを起動したところです。 プロフェッショナルモードで135判カラーネガフィルムをスキャンするという前提で話を進めます。 基本設定は左のとおりです。 48bitカラーというのは、Photoshopでいうところの16bit/Channelです。RGBと3チャンネルありますから、16bit×3=48bitということになります。 解像度は2400dpi。 135判フルサイズの画面をスキャンすると、だいたい800万画素ぐらいになります。 アンシャープマスク、粒状低減などのオプションは一切OFFです。 Digital ICEも使いません。 Digital ICEを使うと、スキャン速度が極端に遅くなり、ディティール先鋭度もかなり悪くなります。 Digital ICEなと使わなくても、たいていのレタッチソフトには、コピースタンプツールという機能が付いています。これで、ポチポチごみを消していった方が早いです。イラチの私は断然コピースタンプツール派です。 コピースタンプツールで修正しきれないほどゴミが付いている場合はフィルム管理に問題があるか、スキャナのガラス面が汚れているかのどちらかです。フラットベッドスキャナのガラス面は定期的に無水エタノールなどで掃除した方がいいです。 EPSON SCANの環境設定です。 詳細は前回書いたとおりですが、新しいドライバで変更になった点もあるので、さらっと解説します。 まず、「常に自動露出を実行」のチェックボックスはクリアしてください。ここにチェックが入っていると、sRGB空間に収まらない階調(早い話がディープシャドウ&ハイエストライト)があっさり破棄されます。せっかく階調が豊富なネガフィルムを白飛び黒潰れにしてしまってはもったいないです。 ディスプレイガンマは、Windowsユーザなら2.2、Macintoshユーザなら1.8にします。 以前のドライバは、0.1刻みで、1.9とか2.1などの中間値が選択できました。1.5などガンマを低く設定すると硬調に、2.4などガンマを上げると軟調に設定できたのですが、現在のドライバは1.8/2.2の二択しかありません。 スキャンサンプルは下の写真です。 撮影に使ったフィルムは、使用期限を半年ばかり過ぎた常温室内保存のコニミノ・センチュリアスーパーです。 左の画像が無補正スキャンの元画像。 右の画像が補正スキャンの上、Photoshopでトーンを整えたレタッチ済み画像です。 最終的に右側の画像に持って行けるよう、解説を進めていきます。 以下、プレビューモードの操作法を解説していきます。 スキャン時のトーン調整はプレビューモードの全体表示で画像のトーンを見ながら行います。 サムネイル表示では画像が小さすぎてトーンやディティールがよく分かりません。 なお、スキャン実行はサムネイルモードで行います。 全体表示モードではスキャン実行できません。 プレビュー実行後、対象ファイルを選択します。 そして、全体表示に切り替えた上、ヒストグラム調整をを行います。 最初は、RGBチャンネル、つまり全体の明るさ/暗さ/コントラストに対して調整を行います。 左側がヒストグラム調整前のダイアログボックス、右側が設定後のダイアログボックスです。 白ポイントは出た目で良いと思います。 出た目の白ポイントは、ヒストグラムの山裾から若干内側に食い込ませた状態となっていることが多いです。 白ポイントをより山裾の内側に設定すると、メリハリの効いた明るいトーンになります。 ただし、白飛びの危険性はあります。 EPSON SCANで補正した結果は実際のヒストグラムに完璧に反映されません。 大雑把に反映されるだけです。 そのため、白一杯まで使いたい場合は、上のように、少し山の内側まで食い込ませた程度で止めておいた方が良いです。 大雑把にしかヒストグラム補正が反映されないというのはプレビューモードの欠点です。 ここに現れるヒストグラムは、あくまでも読み取り画素数の少ないプレビューモードにおけるヒストグラムであり、本スキャンとは別物です。 サンプリングされた画素だけでは、どうしても実際の輝度分布に対し誤差が出ます。 あくまでも、トーン傾向をつかむためのヒストグラムと考えた方がいいかもしれません。 黒ポイントは原則ヒストグラムの山裾より少しだけ内側に設定します。 さらに内側に突っ込むと、よりシャドウの締まりが出ます。ただし、黒潰れする可能性はあります。 シャドウの階調が多い写真の場合は、山裾ギリギリの方が良いかもしれません。 リニアに反映されるヒストグラム補正ではないため、あまり内側に切り詰めると、ディープシャドウを捨てる危険があります。 銀塩写真はアンダーに弱く、シャドウデータはできるだけ大切にしたいです。 ヒストグラム中央のグレー三角ですが、今回の写真では中庸濃度のネガのため操作していません。 しかし、ネガ濃度によっては有効に使えます。 極端に黒っぽい画像の場合は、グレー三角を左方向にドラッグすると、階調が出てきます。 逆に極端に眠いトーンの場合はグレー三角を右方向にドラッグすると、メリハリが出てきます。 このあたりの使い方は、Photoshopのレベル補正と同じと考えていいです。 このエントリの最後に、ヒストグラム補正に関する操作一覧をまとめておきましたので御覧ください。 なお、「出力表示」ボタンを押すと、予想される出力時ヒストグラムが表示されますが、どうもアテになりません。 予想ヒストグラムで黒端/白端ともまだ切り詰められると思っても、実際には過剰補正となり、黒潰れ/白飛びする場合がありますし、思ったほど効果がない場合もあります。 RGBヒストグラム補正をすると、トーンカーブの形が歪みます。 上の例では、黒潰れのトーンカーブになるはずです。黒潰れに弱い銀塩写真の場合、これは非常にまずいので、左図のように修正します。 トーンカーブの修正方法ですが、ヒストグラム補正下の出力スライダを操作します。黒から白へのグラデーションが描かれたスライダーですね。 上の場合は、黒ポイントを18から41へ、つまり右移動させると、ヒストグラム補正で決定した場合の0%黒レベルを、0%ブラックとして出力することが可能になります。 なお、白側のトーンカーブも直したくなりますが、これはヘタにいじらない方が無難です。 出力スライダの白端を右側に動かしたくなりますが、白飛びをすることが多いです。 銀塩フィルムのハイエストライトというのはヒストグラムの右端にダラダラと伸びていくのが特徴ですが、これはプレビューウィンドウの大雑把なヒストグラムでは確認不可能です。 ここまでの調整で輝度レベル調整は一段落です。 続いて、色味の調整に移ります。 デジタルカメラでいえば、ホワイトバランス調整ですね。 RGBチャンネル補正スキャンしただけの場合、たいていはネガフィルムのオレンジベースが補正しきれず、青緑色に転んだトーンになっていることが多いと思います。 こうした場合、下記の要領でRチャンネル、Gチャンネル、Bチャンネルごとにヒストグラム/トーンカーブ補正することにより、色味を自然なトーンに近づけていきます。 まず、Rチャンネル(赤チャンネル)から設定していきます。 設定は、上の図のように、行います。 左が設定前。右が設定後のダイアログボックスです。 キーポイントは、RGBチャンネルで設定した場合と同じ位置に、白ポイント、黒ポイントを移動させる点にあります。 この場合は、白/黒ともに左移動です。 この操作でホワイトバランスが揃っていきます。 もし、Rチャンネルのトーンカーブの形がおかしくなったら、修正しておきます。 続いて、Gチャンネルの設定を行います。 RGBチャンネルで設定した場合と同じ位置に、白ポイント、黒ポイントを移動させます。 この設定は、フィルム自体のトーンに左右されることが多いです。 コニミノ・センチュリアスーパーの場合、Rチャンネルでヒストグラム補正を行うと、Gチャンネルも連動して補正されることが多く、ほとんどの場合、補正する必要がありません。 続いて、Bチャンネルの設定を行います。 RGBチャンネルで設定した場合と同じ位置に、白ポイント、黒ポイントを移動させます。 移動後、わずかに青いな、と感じた際には、白ポイントを右側にドラッグします。 逆に、黄色っぽいな、と感じた場合には、白ポイントを左側にドラッグします。 画像にもよりますが、この操作でホワイトバランスはだいたい揃うと思います。 ただし、使用フィルムと光源色温度がずれている場合は、単純な色カブリとはならず、補正しきれないこともあります。 デイライト用フィルムで、タングステン電球照明を撮った場合などですね。 こうした場合や、自然光とタングステン電球光のミックス光を撮った場合、色カブリがハイライト、中間調、シャドウとそれぞれに異なるねじれを生じていることがあります。 ハイライトは赤に転んでいるのに、中間調はマゼンタ、シャドウはブルーに転ぶ、という面妖なカラーバランスになっていることは決して珍しいことではありません。 こうした場合の補正は、RGB各チャンネルの黒ポイント、中間ポイント、白ポイントをそれぞれ個別に操作して行います。 かなり、面倒な補正になりますが、精密に色バランスを操作できるので試してみる価値はあります。 RGB各色のヒストグラム設定終了後、出力側のトーンカーブが変化していることがあります。 極端に1チャンネルだけ、カーブが離れているときは補正します。 場合によっては、トーンカーブ補正をしない方が良いこともありますので、プレビュー画像を見ながら判断してください。 この後、本スキャンを実行します。 下が、本スキャンを終えた直後の画像/ヒストグラム、レタッチ後の画像/ヒストグラムです。 いずれも、フィルムの黒枠をトリミングツールで削除した後の画像ヒストグラムです。 黒枠が残ったままヒストグラムを見ると、黒枠分のシャドウがヒストグラム左側に残り、正しいトーン調整ができません。 ノンレタッチのヒストグラムですが、なかなか良い形になっています。 黒端はスカスカですが、レタッチで補正できる範囲です。 この程度の間隙なら上等の部類だと思います。 白端も白飛びしていません。 レタッチ用素材としては上々だと思います。 シャドウデータ、ハイライトデータともに破棄することはできますが、追加することはできません。 無から有を生じさせることは不可能ということですね。 そのため、黒端/白端に多少余裕を持たせたスキャン画像を作るわけです。 この後、Photoshop、Paintshop Proなどのフォトレタッチアプリケーションでトーン修正を行っていきます。 一番単純なコントラスト補正は、左画像のヒストグラムを右画像のヒストグラムのように、黒ポイント/白ポイントを移動させるだけです。 俄然、シャッキリしてくるはずです。 後は煮るなり焼くなり好きにしてください。 タイトル直下の写真では、トーンカーブを緩いS字にしてコントラストを少しだけ付け、彩度を若干上げています。 最後に、EPSON SCANのヒストグラム調整の修正パラメータ一覧をまとめておきます。 Aは黒ポイント。 右に動かすと、コントラストは強くなりますが、破棄されるシャドウデータが増え、黒潰れする場合があります。 左に動かすと、階調は豊かになりますが眠くなります。 Bは中間ポイント。 ガンマを操作する部分です。 右に動かすと、コントラストが強く濃い画面になります。 左に動かすと、眠たいけれど明るく淡い画面になります。 Cは白ポイント。 右に動かすと、眠たいけれど、ハイライトの階調が豊富に残ります。 左に動かすと、メリハリの付いた明るいトーンになります。過度に左側に動かすと、白飛びする場合があります。 EPSON SCANのヒストグラム/トーンカーブ調整のまとめと書きましたが、要はフォトレタッチの基礎のまとめですね。 なお、グレーバランス調整で、スポイトを使って無彩色と思われるポイントをクリックする方法もありますが、銀塩粒子があるために、なかなか一発で良いトーンにはなりません。サンプリングポイントを5×5pixelsにしても成功率はあまり高くありません。 スポイト系の一発レタッチツールというのは便利そうですが、実用になるシーンは少ないですね。 とはいえ、手間のかかることではありませんから、ものは試しでスポイトを使ってみるのはいいと思います。 当たれば大儲けです。^^ なお、曇天時の真っ白な空が入った写真をスキャンした場合、出た目のヒストグラムは右図左のようなものになります。 右側に小さい山ができますが、これは空の白です。よほど、雲の怪しい雰囲気を出すのでなければ、通常ディティールなしと判断して良い部分です。 そうした場合は、右図右のような形に白ポイントを移動させればOKです。 シャドウに締まりがない場合は、同様にヒストグラムの山裾内側に黒ポイントを移動させます。
by xylocopal2
| 2009-04-26 19:30
| Hardware
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